社会悪の根絶?(「一族郎党市中引き回しの上・・・)

envy_why-he-getsmuchmoney 私生活に荒廃をもたらす情熱は、公的生活にも同様の荒廃をもたらす。‘ねたみ’のような悪しきものからよい結果が生まれるとは考えられない。それゆえ、理想主義的な理由から、社会組織を根本的に変革し、社会正義を大幅に増やしたいと思う人は、ねたみ以外の力が改革の助け(手段)になることを、望まなければならない。
出典:ラッセル『幸福論』第6章「ねたみ」
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA16-070.HTM

Passions which work havoc in private life work havoc in public life also. It is not to be supposed that out of something as evil as envy good results will flow. Those, therefore, who from idealistic reasons desire profound changes in our social system, and a great increase of social justice, must hope that other forces than envy will be instrumental in bringing the changes about.

[寸言]
気に入らない者に鉄槌を加えたいという情熱(ねたみ心)がいかに大きな力を持っていることか。気に入らない者に鉄槌を加えることだけで終わればあまり弊害はないだろうが、それによって(社会正義の確保によって),その利益以上の社会悪(あるいは社会的損害)を与えるようでは元も子もない。
社会的正義の実現はもちろん力を尽くすべきであるが、そのやり方については十分その効果や影響(結果)を考慮して行うべきであろう。

完璧主義は不幸のもと

Perfectionist 私たちは,我々の友人たち欠点はあるが,全体的に見れば,好意を持てる,感じのいい人たちであることを知っている。しかし,彼らが私たちに対して同じ態度をとるのは耐えられないという自分を発見する。
私たちは,その他の人間と異なり,私たちには欠点などないと,友人たちが思ってくれることを期待する。私たちに欠点があることを認めざるを得ない場合,私たちは,この明白な事実について,あまりにも深刻に考えすぎる。いかなる人間も,完璧であることを期待すべきではなく,また,完全でないという事実について,不当に悩むべきではない。

perfectionist-2We know that our friends have their faults, and yet are on the whole agreeable people whom we like. We find it, however, intolerable that they should have the same attitude towards us. We expect them to think that, unlike the rest of mankind, we have no faults. When we are compelled to admit that we have faults, we take this obvious fact far too seriously. Nobody should expect to be prefect, or be unduly troubled by the fact that he is not.
出典:The Conquest of Happiness, 1930, chap.8:Persecution mania
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA18-020.HTM

[寸言]
・完璧主義は不幸のもと
・それに完璧主義は長続きしない
・またややもすると完璧主義者は他人に対しても完璧を求めやすい
・もっと肩の力を抜いて

被害妄想にならないためには確率論の真理の理解が重要

estimate-probability_keep-calm 確率論に従えば、ある特定の社会に住んでいる異なる人びとは、一生の間には、ほぼ同量のひどい仕打ちを受けるというのが、ありそうなことである。ある(人間の)集合のなかの(要素である)一人が、その人自身の説明によれば、みんなから酷い仕打ちを受けているとすれば、多分、その原因は彼自身の中にあるのであり、実際は危害を受けていないのに受けたと空想しているか、あるいは、無意識的に、抑えきれない怒りを引き起こすようなふるまいをしている(注:そうしてその結果としての反応を得ている)と思われる。

In accordance with the doctrine of probability, different people living in a given society are likely in the course of their lives to meet with about the same amount of bad treatment. If one person in a given set receives, according to his own account, universal ill-treatment, the likelihood is that the cause lies in himself, and that he either imagines injuries from which in fact he has not suffered, or unconsciously behaves in such a way as to arouse uncontrollable irritation.
出典:The Conquest of Happiness, 1930, chap.8: Persecution mania
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA18-010.HTM

[寸言]
もちろん,例外はあるので,その人がたままた特異な経験(ありえないほどの不幸の連続,マイノリティとしての迫害,その他)をしてきた可能性はゼロではない。しかし,ほとんどの場合は確率論があたっている。従って,客観的にみて,自分がそういった特異の環境・状況のなかにいると断定できない場合には,悪意を持った人に騙させたくなければ,常に冷静さを失わないように気をつける必要がある。たとえば,冷静さを失わなければ,「オレオレ詐欺」などはふつうはひっかからないはずであるが・・・?

人間の命に究極的な価値があるかどうかという疑問なども・・・

mothertheresa_love もし自分の子供が病気になったら,あなたは不幸になるかもしれないが,いっさいが空しいとは感じないだろう。あなたは,子供の健康を回復させることこそ注意を払うべき事柄であって,人間の命に究極的な価値があるかどうかという疑問などはどうでもよいと感じるだろう。金持ちも,しばしばそうであるが,いっさい空しいと感じるかもしれないが,もし万一財産を失うようなことでもあれぱ,次の食事は決して空しいものではないと感じることだろう。

If your child is ill, you may be unhappy, but you will not feel that all is vanity; you will feel that the restoring of the child to health is a matter to be attended to regardless of the question whether there is ultimate value in human life or not. A rich man may, and often does, feel that all is vanity, but if he should happen to lose his money, he would feel that his next meal was by no means vanity.
出典:The Conquest of Happiness, 1930.
詳細情報: http://russell-j.com/beginner/HA12-020.HTM

[寸言]
明治時代に東京帝国大学の学生である藤村操(ふじむら・みさお)が「・・・萬有の眞相は唯だ一言にして悉す、曰く「不可解」。・・・」なる遺書を残して,華厳ノ滝から投身自殺したことは有名な話。

しかし、この藤村操が結婚していて幼児がいたら自殺などしなかったであろう。たとえ、(人間は他の生物に比べて相対的に高等であるために繁栄しているにすぎず)人間に「客観的な」価値があるわけではないとしても、大人の助けを求める幼い我が子が面前にいれば、幼い子どもを残して自殺などする人はほとんどいないであろう。

知識人の中には、このような思い込みをする人が時々いる。優れた人が一般人を愚かだとさげすんでも、その優れた人の百倍優れた人からみればその他人をさげすんでいる人も同様に愚かに見えることであろう。
キリスト教など、一神教の信者のなかには、人間は神によって創造されたと信じこんで、それゆえ自分たちは優れていると思い込んでいる人たちが少なくない。また、特定の宗教を信じているという理由で他の宗教(邪教)や無宗教の人たちよりも優れている(より生きる価値がある)と考えている人も少なくない。
これは宗教に限らず、(宗教でないといったり、宗教であるといったりしている)新党であろうと、特定の主義主張を信じている人たちに対しても同様に(愚かだ)言えるであろう。

神経疲労の最悪の特徴の一つ

nervous_breakdown 神経疲労の最悪の特徴の一つは,神経疲労は人と外界をへだてる一種のスクリーンの働きをすることである。さまざまな印象が,いわば,布につつまれ,音を消されて,彼のところに到達する。彼はもはや,ちょっとしたいたずらや気に障る他人の癖によっていらいらさせられる場合を除いて,他人に注意を払おうとはしない。食事からも日光からも,なんの喜びも引き出せず,ただ,2,3の事柄に関心が集中し,他のあらゆるものに無関心になる。こういう状態では,休息などできなくなり,絶えず疲労が蓄積し,ついには,医者の治療が必要となる。
出典:ラッセル『幸福論』第5章「疲労」
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA15-090.HTM

One of the worst features of nervous fatigue is that it acts as a sort of screen between a man and the outside world. Impressions reach him, as it were, muffled and muted; he no longer notices people except to be irritated by small tricks or mannerisms; he derives no pleasure from his meals or from the sunshine, but tends to become tensely concentrated upon a few objects and indifferent to all the rest. This state of affairs makes it impossible to rest, so that fatigue continually increases until it reaches a point where medical treatment is required.
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[寸言]
疲労がたまると仕事の能率が悪くなるだけでなく大きな失敗をする危険性もでてくる。また,周囲の人たちに思いやりを持つ余裕もなくなる。
やはり,疲れがたまっている場合は休息あるいは休暇をとったほうが,お互いのためによい。
わかってはいるが,いろいろなしがらみがあると・・・。

騒音による疲労-聞かないようにしていても・・・

noise-clip 都会で働く人は、勤務時間中ずっと、そして通勤時間中(職場と家庭の間に費やされる時間)はさらにより多く、騒音にさらされる。そういう騒音の大部分は、確かに、意識的には聞かないようにできるようになるが、しかし彼はそれによって疲労が少なくなることはなく、(それどころか)騒音を聞かないようにと意識下で(無意識に)努力をするために、よりいっそう消耗する。
もうひとつ別の、気づかないうちに疲労をもたらすものは、見知らぬ他人がいつもそばにいることである。
出典:ラッセル『幸福論』第5章「疲労」
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA15-010.HTM

…, all through working hours, and still more in the time spent between work and home, the urban worker is exposed to noise, most of which, it is true, he learns not to hear consciously, but which none the less wears him out, all the more owing to the subconscious effort involved in not hearing it. Another thing which causes fatigue without our being aware of it is the constant presence of strangers.

[寸言]
聞き慣れている音は(大きな音でないかぎり)それほど気にならないし、その音によって疲れることはそれほどない。しかし、聞き慣れない音はなんだろうと気になり、聞き慣れている音でも大きな音はやはり気になり、神経が疲れる。
onara-wo-suruna また、集中して仕事をしいている時には、聞き慣れない不快な音でない限り、周囲の音は余り気にならない。
自分のおならは気にならないが、他人のおならは非常に気になり、失礼な奴だと不愉快になる。ただし、気にいらない人間が何か偉そうなことを言っている時に、誰かがおならをしてその気にいらない話を妨害するとうれしくなる?

「大物」(や著名人)の心配癖 -破産、スキャンダル、裏切り・・・

SACRI-F 中にはこのような破産の恐れなど全然ないような大物もいるが、そのような高い地位につくためには、一般的に言って、長年にわたって精力的な闘いを続けなければならなかったし、その間、世界各地の出来事について積極的に注意を払い続ける必要があったし、またいつも競争相手の陰謀を挫かなければならなかった。こういった努力の結果、十分な成功を得た時には、すでに神経はまいっており、心配ぐせがついてしまっているため、心配する必要がなくなっても、心配する習慣を振り払うことができなくなってしまっている。
出典:ラッセル『幸福論』第5章「疲労」
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA15-010.HTM

Some, it is true, are big enough to be above this fear, but to reach a great position of this kind they have generally had to pass through years of strenuous struggle, during which they had to be actively aware of events in all parts of the world and constantly foiling the machinations of their competitors. The result of all this is that when sound success comes a man is already a nervous wreck, so accustomed to anxiety that he cannot shake off the habit of it when the need for it is past.

[寸言]
何の心配もないように思われる大物や著名人にも、他人が知れない心配事が隠れていることが少なくない。破産する恐れがなくても、親しい人間の裏切りにあったり、スキャンダルが発覚し、世の中の信頼を失い、孤独になることになるかも知れない。人気があり著名な人間も世間に飽きられたり、スキャンダルがあきらかになれば一夜にして注目をあびることがなくなり、結局は収入源を立たれたり、事業に失敗したりして、大きな負債(借金)を負うことも珍しくない.
従って、そういった著名人にとっては世間の評判(少なくとも自分を支持してくれる人々の評判)が重要であり、そのような評判を失うことがないように、細心の注意を払う。そのために、時には偽善に陥ったり、自分の本当の考えや気持ちを隠すようになったりする。
abe_susitomo01 あるいは、そういう世間一般の評判を気にしたくないので権力者に媚を売ったり御用学者になる(小数の権力者にたよる)人間もいる。多数に媚を売るよりも小数者のご機嫌とりをしたほうが「楽」だと考えるのかも知れないが、安楽な生活の代価として、世間一般の憎悪を受けることになりやすい。そのような憎悪を受けても平気な人もいるが、晩年になって初めて後悔する人も少なくない(ように見える)

富者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる。しかし・・・

bored_kill-time-website 金持ちになればなるほど金もうけはますます容易になってくる。ついには,1日5分間働けば,使い方がわからないほどの金を手に入れる(もたらす)ようになる。こうして,かわいそうなこの男は,成功した結果,途方にくれてしまうことになる。成功そのものが人生の目的だと考えられるかぎり,どうしてもこういう事態にならざるをえない。成功した後,成功をどう扱ったらよいか教えられていないかぎり,成功の達成が,人を「退屈のえじき」にするのは避けられない。
出典:ラッセル『幸福論』第3章「競争」
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA13-050.HTM

think-slowly_satan-make-people-busyAs he gets richer and richer it become easier and easier to make money, until at last five minutes a day will bring him more than he knows how to spend. The poor man is thus left at a loose end as a result of his success. This must inevitably be the case so long as success itself is represented as the purpose of life. Unless a man has been taught what to do with success after getting it, the achievement of it must inevitably leave him a prey to boredom.

[寸言]
親が貧しかったために、財産を受け継ぐこともなく、本人の努力と運によって成功すれば、人は、その人を賞賛する。これに対し、親、祖父母(あるいはご先祖様)から大きな財産を受け継いでも、財産をつぶしたり、財産をつぶさないまでも尊大な態度をとり続ければ、人は、その人を軽蔑する。

苦労して成功する人もいれば、財産を浪費する人もいるが、「統計的に言えば」、財産を受け継いだ人のほうが成功する確率は高くなる。

inequality 人はスタートにおいて、決して平等ではない。米国のように1%の人が国の40%の富を保有しているが(皆保険制度をひいていないために)貧乏人は医者にもかかれないような社会を創ってはならない。

引用した言葉は、「富者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」のが、「確率的に言って」世の常であることを率直に表現した言葉であるが、富者も上手なお金や余暇の使い方がわからなくて不幸になっている人がけっこういることを少し皮肉っている

「一億総活躍社会」の幻想 -飴と鞭で支配層の取り分を増やすための合言葉

Cartoon boss man looking greedily at a pair of money bags.
Cartoon boss man looking greedily at a pair of money bags.

(従って)もし諸悪の根源と言われている拝金主義を減らしたいと思うならば,第一歩として,誰もが十分に持ち,しかも持ちすぎる者がいない社会組織を創り出さなければならない。
出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「希望と恐怖」
詳細情報:http://russell-j.com/HOPEFEAR.HTM

If, therefore, we wish to diminish the love of money which, we are told, is the root of all evil, the first step must be the creation of a system in which everyone has enough and no one has too much.

[寸言]
 競争主義に毒された現代(特に米国社会,続いて日本)。

ichioku-sokatuyaku_abe 競争を過大評価する社会における合言葉は,「誰にもチャンスがある社会,何度でも挑戦できる社会」。実際は,平等のチャンスなどは存在していない(スタートにおいて不平等)。たまたま,才能があり,大変な努力の末に成功した者をとりあげ,誰にもチャンスがあるかのような幻想をまきちらす
個人の社会的地位や経済状態は不安定であり,変動がはげしい現代,変動するものは希望と恐怖の源泉となり,拝金主義(金銭崇拝)の生まれる土壌ともなる。「諸悪の根源」と言われる拝金主義をなくしたいのであるならば,その第一歩として,誰もが十分に持ち,持ちすぎた人間がいない社会組織をつくり出さなけれならない」というラッセルの主張。

「不足」は幸福であるための不可欠な一要素

Marie-Antoinette_lavishness ものを簡単に入手できる人は,欲望を達成しても幸福はもたらされない,と結論する。もし,彼が哲学者気質の人であれば,人生は本質的にみじめである,なぜなら,欲しいものは何でも持っている人でも,なお不幸なのだから,と結論する。彼は,欲しいものをいくつか持っていないことこそ,幸福の不可欠の要素の一つである,ということを忘れているのである。

The man who acquires easily things for which he feels only a very moderate desire concludes that the attainment of desire does not bring happiness. If he is of a philosophic disposition, he concludes that human life is essentially wretched, since the man who has all he wants is still unhappy. He forgets that to be without some of the things you want is an indispensable part of happiness.
出典:The Conquest of Happiness, 1930.
詳細情報: http://russell-j.com/beginner/HA12-020.HTM

[寸言]
しばらくの間、ラッセル『幸福論』から再度少しひろってみます。