金持ちになればなるほど金もうけはますます容易になってくる。ついには,1日5分間働けば,使い方がわからないほどの金を手に入れる(もたらす)ようになる。こうして,かわいそうなこの男は,成功した結果,途方にくれてしまうことになる。成功そのものが人生の目的だと考えられるかぎり,どうしてもこういう事態にならざるをえない。成功した後,成功をどう扱ったらよいか教えられていないかぎり,成功の達成が,人を「退屈のえじき」にするのは避けられない。
出典:ラッセル『幸福論』第3章「競争」
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As he gets richer and richer it become easier and easier to make money, until at last five minutes a day will bring him more than he knows how to spend. The poor man is thus left at a loose end as a result of his success. This must inevitably be the case so long as success itself is represented as the purpose of life. Unless a man has been taught what to do with success after getting it, the achievement of it must inevitably leave him a prey to boredom.
[寸言]
親が貧しかったために、財産を受け継ぐこともなく、本人の努力と運によって成功すれば、人は、その人を賞賛する。これに対し、親、祖父母(あるいはご先祖様)から大きな財産を受け継いでも、財産をつぶしたり、財産をつぶさないまでも尊大な態度をとり続ければ、人は、その人を軽蔑する。
苦労して成功する人もいれば、財産を浪費する人もいるが、「統計的に言えば」、財産を受け継いだ人のほうが成功する確率は高くなる。
人はスタートにおいて、決して平等ではない。米国のように1%の人が国の40%の富を保有しているが(皆保険制度をひいていないために)貧乏人は医者にもかかれないような社会を創ってはならない。
引用した言葉は、「富者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」のが、「確率的に言って」世の常であることを率直に表現した言葉であるが、富者も上手なお金や余暇の使い方がわからなくて不幸になっている人がけっこういることを少し皮肉っている