「大物」(や著名人)の心配癖 -破産、スキャンダル、裏切り・・・

SACRI-F 中にはこのような破産の恐れなど全然ないような大物もいるが、そのような高い地位につくためには、一般的に言って、長年にわたって精力的な闘いを続けなければならなかったし、その間、世界各地の出来事について積極的に注意を払い続ける必要があったし、またいつも競争相手の陰謀を挫かなければならなかった。こういった努力の結果、十分な成功を得た時には、すでに神経はまいっており、心配ぐせがついてしまっているため、心配する必要がなくなっても、心配する習慣を振り払うことができなくなってしまっている。
出典:ラッセル『幸福論』第5章「疲労」
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA15-010.HTM

Some, it is true, are big enough to be above this fear, but to reach a great position of this kind they have generally had to pass through years of strenuous struggle, during which they had to be actively aware of events in all parts of the world and constantly foiling the machinations of their competitors. The result of all this is that when sound success comes a man is already a nervous wreck, so accustomed to anxiety that he cannot shake off the habit of it when the need for it is past.

[寸言]
何の心配もないように思われる大物や著名人にも、他人が知れない心配事が隠れていることが少なくない。破産する恐れがなくても、親しい人間の裏切りにあったり、スキャンダルが発覚し、世の中の信頼を失い、孤独になることになるかも知れない。人気があり著名な人間も世間に飽きられたり、スキャンダルがあきらかになれば一夜にして注目をあびることがなくなり、結局は収入源を立たれたり、事業に失敗したりして、大きな負債(借金)を負うことも珍しくない.
従って、そういった著名人にとっては世間の評判(少なくとも自分を支持してくれる人々の評判)が重要であり、そのような評判を失うことがないように、細心の注意を払う。そのために、時には偽善に陥ったり、自分の本当の考えや気持ちを隠すようになったりする。
abe_susitomo01 あるいは、そういう世間一般の評判を気にしたくないので権力者に媚を売ったり御用学者になる(小数の権力者にたよる)人間もいる。多数に媚を売るよりも小数者のご機嫌とりをしたほうが「楽」だと考えるのかも知れないが、安楽な生活の代価として、世間一般の憎悪を受けることになりやすい。そのような憎悪を受けても平気な人もいるが、晩年になって初めて後悔する人も少なくない(ように見える)