二つの関係数が順序的に類似している場合、それらの関係数は同じ「構造」を成立させる(generate 生じさせる,生む)と言うことができる。しかし「構造」はそれ(順序的に類似)よりもいくらか一般的な概念である。なぜなら構造は「2項関係」(dyadic relations 二つの項の間の関係)に限られないからである。 三つあるいは四つの項の間の関係は幾何学において重要であり、ホワイトヘッド(注:ラッセルの共同研究者)が『プリンキピア・マテマティカ(数学原)理』 の第四巻でそれを扱う予定であったが、そのための準備の仕事をかなりやった後に彼の興味が衰え、彼はその仕事を捨てて(flagged)哲学に向った(he abandoned the enterprise for philosophy/参考:abandon computers for Internet-enabled mobiles コンピューターを見捨てて、インターネット接続可能の携帯に乗り換える)。けれども、構造の概念がいかにして一般化されうるか(することができるか)を理解することは割合容易である。PとQとはもはや二項関係でなく三項関係だと仮定しよう。そういった関係(三項関係)には、多くの馴染みの例がある。。たとえば「の間」とか、「嫉妬」とか言う関係である(訳注:”between and jealosy”:この表現はネットで調べてもでてこないが、内容は明らかであろう。つまり、母親と二人の子供の間といった親子関係においても、男女関係においても、3人の間には(between)、ねたみや嫉妬(jealousy)の感情が起こることを例にしていると思われる)。もし、PとQの領域を相関させることができるために、x, y, zが -x, y, z の順序で- Pなる関係をもつときはいつでも、これらの対応項も同じ順序でQなる関係をもち、また、逆も真である場合は、PとQとは同じ構造をもつ、と我々は言う(であろう)。構造は種々の経験的理由(emprical reasonsから重要なものであるが、また純粋に論理的な理由からも重要である。二つの関係(注:両者の関係ではなく、関係Pと関係Q)が同じ構造をもつとき、それらの論理的特性は、それらの範囲の要素(成員)であることに依存するような特性を別とすれば、同一である。私が「論理的特性」と言っているのは、論理学によって「証明」できる特性だけでなく、論理的名辞(logical term)によって「表現」できるものを意味している(訳注:野田氏は、みすず書房刊の訳書で、「論理的名辞で表現されうる特性には限らない」と訳出してしまっている/論理的に証明可能でなくても、論理的名辞で表現できればよいと言っているのに・・・)。たとえば、系列関係を定義する三つの特質、すなわち、関係が非対称的で、移行的で、連関的であるという(3つの特質)の例をとりあげてみよう。これらの特質は論理的名辞で表現可能である。また、そしてある関係がこれらの特質のいずれかもつとき、その関係に順序的に類似せる全ての関係もやはりその特質をもつ。各関係数は、有限であろうと無限であろうと、この数(関係数)を持つあらゆる関係の、一つの論理的特性である。おおざっぱに言えば、ひとつの関係について述べることのできる全て(のこと)は、- その関係を持つ諸項に言及することなく,また,論理的名辞によって表現することのできないいかなる特性をも導入することなく-、あなたが出発するその関係に類似しているいかなる関係についてもまたひとしく真である(訳注:bring in もたらす;提出する)。論理的特性と論理的でない特性との区別は重要である。たとえば、Pが色の間の関係 たとえば虹における色の順序 であるとすると、色の間の関係であるという特性は、Pに順序的に類似せるすべての関係に属するとは言えない。しかし系列的であるという特性は、すべてに属するのである。もっと複雑な例をとれば、蓄音機のレコードとそれの奏する音楽とは、それらをつくっている経験的材料は非常にちがうが、それらの論理的特性に関しては同一なのである。
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.18 When two relation-numbers are ordinally similar, we can say that they generate the same ‘structure’, but structure is a somewhat more general conception than this since it is not confined to dyadic relations – i.e. relations between two terms. Relations between three or between four terms are important in geometry, and Whitehead was to have dealt with them in the fourth volume of the Principia, but, after he had done a lot of the preliminary work, his interest flagged and he abandoned the enterprise for philosophy. It is, however, fairly easy to see how the conception of structure can be generalized. Suppose that P and Q are no longer dyadic but triadic relations. There are many familiar examples of such relations, for example, between and jealousy. We shall say of P and Q that they have the same structure if their fields can be correlated so that whenever x y z, in that order, have the relation P, their correlates, in the same order, have the relation Q, and vice versa. Structure is important for empirical reasons, but there are also purely logical reasons for its importance. When two relations have the same structure, their logical properties are identical, except such as depend upon the membership of their fields. I mean by ‘logical properties’, properties such as can be expressed in logical terms, not only such as can be proved by logic. Take, for example, the three characteristics by which serial relations are defined – viz. that they are asymmetrical, transitive and connected. These characteristics can be expressed in logical terms ; and if a relation has any one of them, so has every relation which is ordinally similar to it. Each relation- number, whether finite or infinite, is a logical property of any relation which has this number. Broadly speaking, anything that you can say about a relation, without mentioning the terms between which it holds and without bringing in any property that cannot be expressed in logical terms, will be equally true of any relation similar to the one with which you start. The distinction between logical and other properties is important. For example, if P is a relation among colours – such, for example, as their order in the rainbow – the property of being a relation between colours will not belong to all relations ordinally similar to P; but the property of being serial, will. To take a more complex illustration: a gramophone record and the music that it plays are indistinguishable as regards their logical properties although the empirical material of which they are composed is very different in the two cases.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.17
関係算術の形式的法則(formal laws)の証明に際して,我々はしばしば系列の系列の系列を扱う機会がある。これは次の例によって心に描くことができる。(即ち、)我々は多くの煉瓦を積み重ねないといけないと想定しよう。そして事柄をより興味深くするために、煉瓦がみな金(でできた煉瓦)であり、我々はフォート・ノックス(注:アメリカのケンタッキー州のフォート・ノックス軍事基地のことで、基地内に米国金塊貯蔵所が置かれている)に雇われていると仮定しよう。まず(横)一列(a row 一行)に(黄金製の)煉瓦を並べることとして、初めに置いた煉瓦の真東(due East)に次の煉瓦を置いていく。次に別の列を作ることとし、前の列に接しかつその真北に煉瓦を置いていく。以下、適当と思われる数の列ができるまで、同様の作業を続ける。続いて、この第一層の上に第二層を積む(第二層の上には第三の層を積み、順次、(用意した)全ての煉瓦が積み重なるまで続ける。その場合(then)、各列はひとつの系列(series)であり、各層(注:第一層、第二層・・・)は系列の系列(series of series)であり、積みかさねた全体は、系列の系列の系列(series of series of series)である。この過程(プロセス)は次のように記号化できる。Pを諸層の間の上(層)から下(層)への関係とする。そこでPの範囲は諸層から成っていることになる。各層は列の系列である。Q1 を最上層の諸列の間の、南から北への関係とし、Q2を第二層の諸列間の関係とし、以下同様とする。Q1の範囲は「列」の系列であることになる。最上層の南の端の「列」における東から西への関係をRllと呼ぼう。Rl2は最上層の第二列における東から西への関係であり、同様に進んで、Rmnにいたる。このときmは「層」の数であり、nは各層における「列」の数である。さてこの例では、「層」や「列」の数を有限だと想定したが、これは例を単純にするためにのみなされた全く不必要な制限である。これらすべてのことは日常の言語で言うと複雑で長たらしくなるが、記号を使用すれば短く容易である。x がPの範囲にある一要素であるときx のPへの関係をFとしよう。すると F3はFとFとFとの関係積である。そこで、たとえば、個々の煉瓦は、Pに対してF3という関係をもつ諸項である。言いかえれば、個々の(一つひとつの)煉瓦は、Pの範囲の要素(成員)の範囲の要素(成員)の範囲の要素(成員)である。こういう系列の系列の系列は、加法と乗法とに対する結合法則を証明するために必要なのである。
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.17 In proving the formal laws of relation-arithmetic we often have occasion to deal with series of series of series. These can be visualized by the following illustration: suppose you have to make a stack of a number of bricks and, to make the matter more interesting, let us assume that they are gold bricks and you are employed at Fort Knox. I shall assume that you first make a row of bricks, putting each brick due East of the previous one; you then make another row, touching your first row but due North of it; and so on, until you have made as many rows as seems appropriate. You then make a second layer on top of the first layer; and a third on top of the second; and so on, until all the bricks are stacked. Then each row is a series, each layer is a series of series, and the whole stack is a series of series of series. We can symbolize this process as follows: let P be the relation of above to below among the layers; the field of P will consist of the layers; and each layer is a series of rows. Let Q1 be the relation South to North among the rows of the top layer, Q2 the relation among the rows of the second layer, and so on. The field of is a series of rows. Let us call R11 the relation of East to West in the most Southern row of the top layer; the relation of East to West in the second row of the top layer; and so on, ending with if m is the number of layers and n is the number of rows in each layer. In this illustration, I have assumed that the number of layers and rows is finite, but this is a quite unnecessary restriction made only to make the illustration simpler. In ordinary language all this is complicated and lengthy, but in symbols it becomes short and easy. Let F be the relation of x to P consisting in x being a member of the field of P. Then F3 is the relative product of F and F and F. The separate bricks, for example, are the terms having the relation F3 to P – that is to say, each brick is a member of the field of a member of the field of a member of the field of P. We need such series of series of series in proving the associative law for addition and multiplication.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.16
順序数(Ordinal numbers )は関係数の(一つの)部分集合(a sub-class)である。即ち,「整列された」系列(‘well-ordered’ series)の関係数である。「整列された」系列とは、その部分集合(注:ただし空集合を除く)が全て第一項(初項)を持つ系列である。超限順序数(Transfinite ordinal numbers)はカントールによって研究されたが、関係数一般は、私の知る限り、(ラッセルとホワイトヘッドの)『プリンキピア・マテマティカ』においてはじめて定義され研究された。(訳注:「無限」は「無限」であって一種類しかないと思ってしまいがちであるが、カントールは無限には種類がある(「濃度」が異なっているいろいろな無限がある)ことを発見し、それを超限数と名付けた。超限数は aleph (アレフ)の記号を用いて表記され(注:テキストでは表示できません!)、最も濃度が小さいものはアレフ・ヌル、またはアレフ・ゼロで表される。) 一つか二つ例をあげると理解に役立つであろう。たとえば,対(つい/カップル)の系列があるとしてそれらの対から、選択の公理に関連して前述したのと同じ意味における,(新たな)選択の系列を作ろうとしているとしてみよう。そのやり方(procedure 手続き)は基数の算術(cardinal arithmetic)におけるやり方(手続き)とよく似たものであり、違っているのは(except that)、以前は選択(したもの)を集合として関心をもっていただけであったが、今度は選択(したもの)をある順序に並べることに関心をもっているということだけである。そこで再び、さきの選択したもの集合を検討する時にやったように、三つの集合(x1, x2, x3) (y1, y2, y3) (z1, z2, z3)があるとして、これらのものから選択したものでひとつの系列を作りたいと望んでいる、と想定しよう。このやり方にはいろいろある(多様な方法でやることができる)。多分、その最も単純なやり方(手順)は次のやり方であろう。(即ち)x1を含む選択は、x1を含まないものより先にくる(comes before 先立つ)。そして,二つの選択のなかで(二回選択行為をした時に)、そのどちらの選択でもx1を含む場合もx1を含まない場合も,y1を含むものが、y1を含まないものよりも先に置かれる(先立つ)。(次に)二つ選択したもののなかで、いずれもx1とy1とを含むかいずれもx1とy1とを含まない場合には、z1を含む選択が、z1を含まない選択より先に置かれる。同様の規則を、x2,y2,z2,についても、、x3,y3,z3についてもたてることにする、このようにすれば、あらゆる可能な選択が、x1,y1,z1ではじまり、x3,y3,z3で終わる系列に並べることができる。この系列が27の項をもつことは明らかである(注:3×3=29)。しかしこの場合27という数はもはや以前の例におけるように基数ではなく、順序数すなわち特別な種類の関係数である。順序数は基数と異なるのは、順序数が選択の間に順序を定めることよってであり、基数の方はそういうことしない。我々が有限数だけを考えている限り、順序数と基数との間に重要な形式的相違は存在しない。しかし、無限数を考慮に入れると、交換法則が成立しなくなるために、両者の相違は重要なものとなる。
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.16 Ordinal numbers are a sub-class of relation-numbers, namely, those that apply to ‘well-ordered’ series, ‘well-ordered’ series being those series in which any sub-class that has members has a first term. Transfinite ordinal numbers were studied by Cantor, but relation-numbers in general were, so far as I know, first defined and studied in the Principia. One or two illustrations may be useful. Suppose for example, that you have a series of couples and you wish to form a series of selections from these couples in the sense explained above in connection with the axiom of selection. The procedure is much akin to that in cardinal arithmetic except that we are now concerned to put the selections in an order, whereas before we were only concerned with them as a class. Suppose, again, as we did in considering class-selections, we have three sets, (x1, x2, x3) (y1, y2, y3) (z1, z2, z3), and we wish to make a series out of selections of these. There are various ways in which this can be done. Perhaps the simplest is as follows: any selection containing x1 comes before any selection which does not contain it. Among selections of which both or neither contain x1, those containing y1 come before those which do not. Among selections of which both or neither contain x1 and y1 those containing come before those which do not. We make similar rules for the suffix 2 and the suffix 3 . In this way we get all the possible selections arranged in a series which begins with ( x1, y1, x1) and ends with ( x3, y1, z1). It is obvious that the series will have twenty-seven terms, but here the number twenty-seven is no longer a cardinal number, as in our earlier example, but an ordinal number – i.e. a particular kind of relation-number. It differs from a cardinal number by establishing an order among the selections, which a cardinal number does not. So long as we confine ourselves to finite numbers, there are no important formal differences between ordinal and cardinal numbers; but, when we allow infinite numbers, the differences become important, owing to the failure of the commutative law.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.15
さて(now 今や)我々は一つの関係Pの関係数を、Pに順序的に類似している諸関係の集合と定義する。この定義は、基数の算術(cardinal arithmetic)において、集合の類似性を順序的類似性でおきかえ、かつ集合を関係でおきかえたもの(基数の算術)に相当する(注: cardinal = cardinal number 基数:位取り記数法で数値を書き記す際に各桁の重み付けの基本となる数で、位が上がる毎に何倍になるかを表す。我々が普段使っているのは隣の桁が十倍あるいは十分の一となる十進数)。関係数における加法(加算)、乗法(乗算)、累乗(べき算)(exponentiation)の定義は、基数の算術におけるそれらのものに幾分似たものである。加法及び乗法は両方とも結合の法則に従う。分配の法則は一つの形では成り立つが、一般的に、もう一方の形では成り立たない。交換法則は、関係の範囲が有限である場合以外は成り立たない。たとえば,自然数の系列のような系列に二つの項を加えただけのもの(一つの系列)を考えてみよう。もしその二項を系列の始めに加えるならば、そうしてできた新たな系列はもとの系列に似たものである。しかし、終りに(その2項を)加えるならば、そうではなくなる。二つの関係PとQとの和(関係Pと関係Qの和)は、xがyに対してPなる関係をもつか、あるいはxがyに対してQなる関係を持つか、またはxがPの範囲に属するか、yがQの範囲に属するかである場合に、xとyとの間に成り立つ関係である、と定義される。この定義により、PとQとの和は、一般にQとP(訳注;逆にした場合)との和に相似でないことになる。このことは一般に関係数について真であるばかりでなく、また順序数についても、それらの一方または両方が無限である場合には真である。
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.15 We now define the relation-number of a relation P as the class of those relations that are ordinally similar to P. This is exactly analogous to cardinal arithmetic with ordinal similarity substituted for class similarity and relations substituted for classes. The definitions of addition, multiplication and exponentiation are more or less analogous to those in cardinal arithmetic. Both addition and multiplication obey the associative law, and the distributive law holds in one form but, in general, not in another. The commutative law does not hold except when the fields of the relations concerned are finite. For example, take a series which is like the series of natural numbers and add two terms to it. If you add the two terms at the beginning, the new series is like the old one; but, if you add them at the end, it is not. The sum of two relations P and Q is defined as the relation which holds between x and y whenever x has the relation P to y, or x has the relation Q to y, or x belongs to the field of P and y belongs to the field of Q. With this definition the sum of P and Q is not, in general, like the sum of Q and P, This is true not only of relation-numbers in general, but also of ordinal numbers when one or both of these are infinite.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.14
関係算術における基本的定義は、前述した「順序的類似性」(ordinal similarity)あるいは(即ち、言い換えれば)「相似性」(likeness)の定義(と同じ)である。関係に関する場合には、これ(順序的類似性)は、集合間で果たす類似性(similarity)と同様の役割を果たす。(二つの)集合間の類似性とは、一方の集合の各項を、他方の集合におけるその対応項( a correlate)と結びつける(ところの)一対一の関係が存在することである、と定義される。二つの関係PとQ(関係Pと関係Q)の間の順序的類似性とは、Pの範囲をQの範囲に対応させる一つの関係があって、二つの項がPの関係を持つ時それぞれの対応項はQの関係をもち、逆もまた真であることを意味する,と(して)定義される。実例(具体例)をあげてみよう。いまPが結婚している政府の役人たちの間の席次の上下関係(precedence)であるとし、Qは彼らの妻たちの間の席次の上下関係であるとしよう。そうすると、このとき妻の夫に対する関係は、Pの範囲とQの範囲とを対応させるものであり、妻たちがQの関係(という席次の上下関係)を相互に持つとき、彼らの夫たちはPの関係を持ち、逆もまた真である。二つの関係PとQが順序的に類似である場合、SがPとQとを対応させるところ関係(その相関関係)であるとすると、Qは、SとPとSの逆関係との関係積(the relative product )である。たとえば,上の例で、xとyが二人の妻であり,xがyにQなる(席次の上下)関係を持つとし、かつ妻と夫との関係がSであるとすると、xは、yの夫にPなる関係をもつ一人の男の妻である。即ち、QはSとPとSの逆関係との関係積と同一なる関係である(この場合Sの逆関係とは夫の妻に対する関係(=(「妻の夫に対する関係」の逆関係))である)。PとQとが系列的関係である場合は、それらの関係の類似性は、それらの項が順序を変えることなく、相互に対応させられうる、ということを意味する。しかしこういう関係に限らず、相似性(likeness)の概念は(注:野田氏は「類似性」similarity と訳してしまっている。)、範囲をもつ全ての関係 -関係の領域と逆領域とが同じ型に属するもの- に適用しうるものである。
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.14 The fundamental definition in this subject is that of ‘ordinal similarity’ or ‘likeness’, which was mentioned above. Where relations are concerned, this plays the same part as similarity played between classes. Similarity between classes is defined as the existence of a one-one relation coupling each term of either class to a correlate in the other. Ordinal similarity between two relations P and Q is defined as meaning that there is a correlator of the field of P to the field of Q which is such that whenever two terms have the relation P their correlates have the relation Q, and vice versa. Let us take an illustration: suppose P is the relation of precedence among married government officials, and Q is the relation of precedence among their wives, then the relation of wife to husband so correlates the fields of P and Q that, whenever the wives have the relation Q, their husbands have the relation P, and vice versa. When two relations P and Q are ordinally similar, if S is the correlating relation, Q is the relative product of S and P and the converse of S. In the above illustration, for example, if x and y are two wives and x has the relation Q to y, and if S is the relation of wife to husband, then x is the wife of a man who has the relation P to the husband of y, that is to say, Q is the same relation as the relative product of S and P and the converse of S; the converse of S being the relation of husband to wife. Whenever P and Q are serial relations, their likeness consists in the fact that their terms can be correlated without change of order, but the conception of likeness is applicable to all relations that have fields — i.e. to all relations where the domain and converse domain are of the same type.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.13
祖先関係の全理論は、非常に重要なものであって、単に数との関係において重要であるだけではない。それゆえに(そういう理由で)、我々(ラッセルとホワイトヘッド)は当該理論(祖先関係の理論)を数の定義を導入する前に展開した(のである)。 さて(今や)、「関係算術」(注:relation-arithmetic/複雑な関係を数学における算術計算の結果と捉えること?)と私の呼ぶものについて述べよう(I come now to ~)。これは「プリンキピア・マテマティカ(原理)」の第二巻の後半を占めている。数学的見地から言えば,これがこの著作(『プリンキピア』)で私の挙げた最も重要な貢献(成果)であった。私が「関係数」(relation-number)と呼んだものは全く新しい種類の数であり、その非常に特殊化された例が「順序数(序数)」(ordinal numbers 順序のある数)である。私は「順序数」について異なるすべての形式的法則(formal laws)が、それよりはるかに一般的な「関係数」についても真であることを発見した。私はまた、関係数が「構造」(structure)というものの理解に不可欠であることを発見した。「構造」(structure)という言葉は、「以下同様」とか「系列」(series 数学の「級数」)という言葉と同じく、我々が日常使い慣れているにもかかわらず、それの正確な意味が付与されていない言葉(注:正確な意味を理解しないで使用している言葉)である。(しかし)関係算術によって「構造」という概念は正確に定義することができる。
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.13 The whole theory of ancestral relations is very important not only in connection with numbers. For this reason we developed the theory before introducing the definition of number. I come now to what I call ‘relation-arithmetic’ which occupied the second half of the second volume of Principia. From the mathematical point of view this was my most important contribution to the work. What I called ‘relation-numbers’ were numbers of an entirely new sort of which ordinal numbers were a very specialized example. I found that all the formal laws which are true of ordinal numbers are true of this far more general kind. I found, also, that relation-numbers are essential to the understanding of structure. ‘Structure’ is one of those phrases, like ‘and so on’ or ‘series’, which are familiarly employed in spite of the fact that no precise significance is attached to them. By means of relation-arithmetic the concept ‘structure’ can be precisely defined.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.12
論理学における選択の理論はいかなる点においても「数」の概念には依存しておらず、『プリンキピア・マテマティカ(数学原理)』では、私たち(ラッセルとホワイトヘッド)は、その理論を数の定義の前に展開した。同じことが,もうびとつの非常に重要な概念、即ち、通常(日常)の言葉では「以下同様」(and so on)と表現される概念についてもあてはまる。 「祖先」という概念を「親」という概念によって(in terms ~に関して、~の観点で)定義したいと思っているとしてみよう。(その場合)あなたは、AはBの親であり、BはCの親であり、以下同様にして有限な数の何段階かを経た後、Zの親であるYという人に達するならば、我々はAはZの祖先であると言ってよいであろう。これは、そこに「有限」という語が含まれておらず、その語は定義されなければならないということ(事実)がなければ、万事うまくいくであろう(しかし、実際は、「有限」が前提で、定義もされなければならない/”but for” は「~がなければ」) そして「有限」という語の定義は、任意の全く一般的な概念、即ち、任意に与えられる関係から生ずる(得られる)ところの「祖先関係」という概念を、特殊な場合に適用することによってのみ可能なのである。「祖先関係」というこの概念は、既に1879年というかなり前に、フレーゲによって最初に展開されていたが、ホワイトヘッドと私がそれを展開するまでフレーゲの仕事は全く誰にも気が付かれなかった(注意を受けなかった)。我々が定義しようと望んだ概念は、さしあたり(in a preliminary way 予備的な・準備的なやりかた/=本格的ではないやり方;)次のように説明できるであろう。xがyに対して関係Rを持つ時、xからyへの一歩をRステップ(R-step)と呼ぼう。するとさらにyからzへさらにRステップ(R-step)進むことができるであろう。(そこで)Rという関係を持つxの「子孫」(posterity)を、xから出発してRステップを何回か進むことによって達しうる全てのものと定義しよう。(この場合、)「有限な数(回数)のRステップによって」達しうる全てのもの,と我々は言うことはできない。なぜなら、我々が「有限(finite)」という語を定義しておらず、かつそれは、「子孫」という概念を用いてのみ定義しうるものだからである。さてRという関係を持つその子孫は、次のように定義される。第一に、Rに関する「遺伝的」(hereditary)集合というものを我々は定義する。これは、その(集合の)一つの要素(成員)からRステップ前進することによって達せられるものがやはりその集合の一要素(成員)であるという特性をもった集合である(注:その手続きによってその集合の外に出ることはない、ということ)。たとえば、「スミス」と呼ばれるという特性は、父と息子との関係において遺伝的であり(注:姓を引き継ぐ社会に限定)、また人間であるという特性は親と子との関係において遺伝的である(注:親から猿が生まれることはないという前提あり)。さて、そこで私は次の定義をする。(即ち)「もしxが属しているRという関係を持ったあらゆる遺伝的集合にyが属しているのならば、yはRという関係を持ったxの子孫に属する。」 さてこれを、普通の全ての整数(whole numbers)に適用し、Rの関係の代りに、ある整数がその直後の整数に対してもつ関係を置くことにしよう。そして今、この関係に属する0(という整数)の子孫を考えると、1はこの子孫(注:後継者)に属することは明らかである。というのは、1 = 0 + 1 であるからである。そしてこのように1が0の子孫に属するがゆえに、2もまたそれに属する(注: 2 = 1 + 1)。さらに2がそうであるがゆえに、3もまたそうである(注:3 = 2 + 1 / あるいは、3 = 1 + 1 + 1)。このように進むと、我々は0の子孫(後継者)に属するところの諸数の集まりの全体を得る。これら全ての数に対して、我々はいわゆる「数学的帰納法」を用いる証明を適用することができる。数学的帰納法とは、もしひとつの特性が0に属し、かつこの特性をもつ任意の数の直接の後続数にも属するならば、その特性は全ての有限な数に属する、という原理である(注:n = (n-1) + 1)。「有限」な数を、0の子孫であると定義するならば、数学的帰納法は、この定義の直接の帰結である。以前には、全ての数は有限でなければならないと考えられていたので、数学的帰納法はひとつの「原理」であると考えられるのが常であった。しかしこれは誤まりであった。数学的帰納法はびとつの「原理」ではなくてひとつの「定義」なのである。それはある数には当てはまるが、他の数には当てはまらない。そしてそれが当てはまるところの数が「有限」な数(有限数)であると定義されるのである。たとえば、有限な数はそれに1を加えることによって増大する。しかるに無限な数はそうでないのである。(注:無限数に1を加えても1増えるわけではない!!)
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.12 The logical theory of selection does not depend at any point upon the concept ‘number’, and we developed it in the Principia before defining ‘number’. The same thing applies to another very important concept, namely, that expressed in ordinary language by the words ‘and so on’. Suppose you wish to define the concept ‘ancestor’ in terms of the concept ‘parent’. You may say that A is an ancestor of Z if A is a parent of B, B is a parent of C, and so on and, after a finite number of steps, you reach some person Y who is a parent of Z. This would be all very well but for the fact that it contains the word ‘finite’ and that this word has to be defined. The definition of the word ‘finite’ is only possible by means of a particular application of a completely general notion, namely, that of the ancestral relation derived from any given relation. This notion of the ancestral relation was first developed by Frege as long ago as 1879, but his work remained quite unnoticed until Whitehead and I developed it. The notion that we wished to define may be explained in a preliminary way as follows: if x has the relation R to y let us call the step from x to y an R-step. You may then be able to make another R-step from y to z. We shall define as the ‘posterity’ of x with respect to R everything that you can reach by R-steps starting from x. We cannot say everything that you can reach by a ‘finite number of R-steps’ because we have not yet defined the word ‘finite’, and we can only define it by means of the conception of ‘posterity’. The posterity of x with respect to R is defined as follows. We will first define a ‘hereditary’ class with respect to R. This is a class which has the property that anything reached by an R-step from one of its members is, again, a member of it. For example, the property of being called ‘Smith’ is hereditary in the relation of father to son, and the property of being human is hereditary in the relation of parent to child. I now define ‘y belong to the posterity of x with respect to R, if y belongs to every hereditary class with respect to R to which x belongs’. Now let us apply this to ordinary whole numbers, putting in the place of R the relation of a number to its immediate successor. If we now consider the posterity of 0 with respect to this number, it is obvious that 1 belongs to this posterity, since 1=0+1; and, since 1 belongs to the posterity of 0, so does 2; and, since 2 does, so does 3. Proceeding in this way, we get a whole set of numbers all belonging to the posterity of 0. To all these numbers, we can apply proofs using what is called ‘mathematical induction’. Mathematical induction is the principle that, if a property belongs to 0 and to the immediate successor of any number which has this property, then it belongs to all finite numbers. Defining ‘finite’ numbers as the posterity of 0, this is an immediate result of the definition. It used to be thought that mathematical induction is a principle, since it was thought that all numbers must be finite. This was a mistake. Mathematical induction is not a principle but a definition. It is true of some numbers and not of others. Those of which it is true are defined as the finite numbers. For example, a finite number is increased by adding 1 to it; an infinite number is not.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.11
当該集合群(関係する集合/問題となる集合の集まり)が一つも空集合を含んでいないならば、各集合からびとつの要素(メンバー)を選び出すことは可能でなければならない,ということは自明であると考える人もある。そう考えない人たちもいる。この点について、言いうる最上の言葉は、ペアノによって言われた。(即ち、)「この原理は真だろうかそれとも偽だろうか。これについての我々の意見は、まったく真理値を持たない(ということである)」と。我々(ラッセルとホワイトヘッド)は、我々が「乗法の公理」と名付けたものに定義を与えた。(即ち、)空集合でないところの諸集合の中の各集合からひとつの代表を選ぶことは常に可能である、という想定である。我々はこの公理(選択公理)を真、あるいは偽とする論拠をまったく見い出さなかった。そこで、我々はこの公理を、それを用いるすべての命題の前提(hypothesis 議論の仮定)の中に、明示的に、含めた。我々がこの問題に出会ったと同じ時に、ツエルメロは彼のいわゆる「選択の原理」なるものを提出した。これは我々のとは少し異なるが、論理的には等値なものであった。彼もまたそれを自明の真理とみなす者の一人であった。我々はそういう見解を採用しなかったので、その公理を想定することなしに乗法をとり扱おうとして、できるかぎりの手をつくした。
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.11 Some people consider it self-evident that, if none of the classes concerned is null, it must be possible to make a selection of one from each. Some others think otherwise. On this point, the best that can be said was said by Peano: ‘Is this principle true or false.? Our opinion has no value.’ We defined what we called ‘the multiplicative axiom’: the assumption that it is always possible to make a selection of one representative from each of a set of classes none of which is null. We found no arguments either for or against this axiom, and we therefore included it explicitly in the hypothesis of any proposition which used it. At the same time that we came upon this problem, Zermelo set up what he called ‘the principle of selection’, which is a slightly different but logically equivalent assumption. He was among those who regarded it as a self-evident truth. Since we did not adopt this view, we sought as many devices as possible for dealing with multiplication without assuming the axiom.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.10
乗法(掛け算)のこの定義を採用した後,我々(注:ラッセルとホワイトヘッド)は予想外の困難に直面した。(即ち)集合の数が無限である場合、(各集合の中から)任意の選択が可能であることは確信できない。関係している(当該)集合の数が有限であれば、総選挙の場合に行われるように、各集合(注:各選挙区)から代表(者)を任意にとりだすことが可能である。しかし集合の数が無限の場合、我々の恣意的行為(arbitrary acts きままな行為)を無限回行うことはできないので、、望む結果を確保する何らかの内包(的規定)(intention 内包)がなくては、選択が可能かどうか確信できない。ひとつ例をあげてみよう。昔々、一人の百万長者がいて、無限の数の靴(注:右足用と左足用で一足=一組)を買い、一足の靴を買うと必ずまた一足の靴下を買いました(とします)。この時、靴の各ペア(一足)からひとつを選択することが可能である。というのは、常に右足の靴を選ぶかあるいは左足を選ぶことができるからである。このようにして、靴に関する限り、選択は存在する(選択可能である)。けれども靴下については、左と右の区別がないので、この選択の規則を用いることはできない。靴下の選択ができるためには、何らかのずっと手のこんだ方法(elaborate method)を採らなければならないであろう。たとえば、靴下の各対(ペア/各1組)についてその一方が他の一方よりも近い位置にあるようなひとつの点(注:空間のなかの特定の位置)を見つける(定める)ことができるであろう。そうすれば各対(ペア)の中から、その点により近い方を選ぶことにより、一つの選択を得る(行う)であろう。私は昔、この問題(パズル)を、トリニティ学寮の食堂のハイ・テーブル(注:偉い人たちが座るテーブル)で、たまたま私の隣に坐ったあるドイツ人数学者に出した。しかし彼は「なぜ大金持なのか(大金持ちでなければならない理由は?)」とだけ言った。
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.10 After we had adopted this definition of multiplication, we were faced by an unexpected difficulty. It appeared that, when the number of classes is infinite, one cannot be sure that any selections are possible. When the number of classes concerned is finite, we can pick out a representative arbitrarily from each of them, as is done in a General Election; but, when the number of classes concerned is infinite, we cannot make an infinite number of arbitrary acts of choice, and we cannot be sure that a selection is possible unless there is some intension which secures the desired result. I will give an illustration: there was once a millionaire who bought an infinite number of pairs of shoes and, whenever he bought a pair of shoes, he also bought a pair of socks. We can make a selection choosing one out of each pair of shoes, because we can choose always the right shoe or always the left shoe. Thus, so far as the shoes are concerned, selections exist. But, as regards the socks, where there is no distinction of right and left, we cannot use this rule of selection. If we are to be able to make a selection out of the socks, we shall have to adopt some much more elaborate method. We could, for example, find a point such that, in each pair of socks, one of the pair is nearer to this point than to the other. We should then obtain a selection by choosing from each pair the one nearer the point in question. I once put this puzzle to a German mathematician to whom I happened to sit next at the High Table at Trinity, but his only comment was: ‘Why a millionaire?’
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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バートランド・ラッセル『私の哲学の発展』第8章 「数学原理ーその数学的側面」 n.9
乗算(注:multiplication 乗法、掛け算)を因数が無限数(になる)まで拡張することは、いわゆる「選択」(selectionsn)によって達成される(is effected 成り立つ)。選択の概念は国会議員の選挙の例によって最も容易に精通することが可能である(be made familiar by ~によって精通する)。当該国で、選挙で選ばれた国会議員(代議士)は誰もがその国会議員の選挙区の一員でなければならないと仮定すると、それら全体の議会(国会)は、選挙区からの一つの「選択」と言われるものを形成する。一般的な概念は,以下の通りである。即ち、空集合でない集合の集合が与えられた場合、ひとつの選択とは、各集合から一つの要素を、その集合の「代表」としてとり出すところの関係である。この選択がなされうる仕方の数 -ただし、どの二つの集合をとっても共通な要素(メンバー)が存在しないと仮定してー は、そのいくつかの(注:the several 5つの集合を扱っているならその5つの、6つの集合を今あつかっているならその6つの)集合の数の積(注:the product 掛け算の結果=積)である。たとえば、(今)3つの集合があり、第一の集合は x1, x2, x3 から成り、第二の集合は z1, z2, z3 から成り、第三はz1, z2, z3 から成るとすると、一つの x 一つの y と一つの z を含む(=でできあがる)任意の集合は、上の3つの集合からの一つの選択(結果)である。そしてこういう選択をする仕方は 27(とおり) あることは誰でもたやすく確かめることができる。(訳注:各集合のメンバーは個性がないのでどれを選んでもよく、3 × 3 ×3 = 27 となる)
Chapter 8 Principia Mathematica: Mathematical Aspects, n.9 The extension of multiplication to an infinite number of factors is effected by means of what are called ‘selections’. The notion of a selection can most readily be made familiar by the example of electing Members of Parliament. Assuming that, in the country concerned, every elected representative must be a member of his constituency, the total Parliament constitutes what is called a selection from the constituencies. The general conception is as follows: given a class of classes none of which is null, a selection is a relation which picks out one member of each class as the ‘representative’ of that class. The number of ways in which this can be done (provided no two classes have any common members) is the product of the numbers of the several classes. For example, suppose we have three classes, the first consisting of x1, x2, x3, the second of y1, y2, y3, third of z1, z2, z3, then any class containing one x, one y, and one z is a selection from the class of three classes, and any reader can easily satisfy himself there are twenty-seven ways of making this selection.
Source: My Philosophical Development, chap. 8:1959.
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