精力的な人生を信奉する愚かな「指導者」たち

良い目的に方向付けられた少しの仕事のほうが,悪い目的に方向付けられた大量の仕事よりも,より良い。ただし,精力的な人生を信奉する人(使徒)は,そのようには考えないであろう。自分の仕事のことを大変気にする人は,常に‘狂信’に陥る危険がある。

A little work directed to a good end is better than a great deal of work directed to a bad end, though the apostles of the strenuous life seem to think otherwise. Those who care much for their work are always in danger of falling into fanaticism, …
出典: The Conquest of Happiness, 1930, chap. 15: Impersonal Interests
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA26-030.HTM

<寸言>
史上最大のスピードと規模で米国の雇用を生み出すとうそぶくトランプ。「自由の国」として自負したアメリカ「合衆国」の国民を分断し、自分は正しいことをやっている(悪を懲らしめている)のだと強弁する独善主義者・独裁主義者トランプ

欧米の指導者トランプのやり方を非難しているが、日本の総理大臣経済や日米安保のことしか考えずに、「ウィン・ウィンの関係」(日米がよければほかのことは知らないよ、他の国も日本と同じことをやればいいんだ、◯◯ファーストでね」と、アメリカにおもねるばかり。

 日本国民は、馬鹿な指導者に従わず、「良い目的に方向付けられた少しの仕事のほうが,悪い目的に方向付けられた大量の仕事よりも,より良い」ということに気づいて欲しい。短期的利益を重視して、将来「深い反省」をするような事態を起こすようなことはすべきではないだろう。

所有欲に駆られ,共有できるものを創り出す創造的意欲に欠ける支配者達

earthrise-moon_big 私たちは,それぞれ,この世に長いこと存在するわけではない。そこで,人間の短い生涯のうちに,この不思議な惑星と,この惑星が宇宙において占める位置について,なんであれ分かることは何でも知っておく必要がある。たとえ不完全なものであっても,知る機会があった場合それを無視することは,劇場へ行って(行ったのにもかかわらず)芝居を見ないのと同じである。この世の中は,悲劇的,喜劇的,英雄的,奇怪な,あるいは不思議な事物でいっぱいであり,世界が提供するこの壮大なスペクタクルに興味を持てない人びとは,人生が提供する特典の一つをもらわずに済ませていることになる。
Each of us is in the world for no very long time, and within the few years of his life has to acquire whatever he is to know of this strange planet and its place in the universe. To ignore our opportunities for knowledge, imperfect as they are, is like going to the theatre and not listening to the play. The world is full of things that are tragic or comic, heroic or bizarre or surprising, and those who fail to be interested in the spectacle that it offers are forgoing one of the privileges that life has to offer.
出典: The Conquest of Happiness, 1930, chap. 15: Impersonal Interests]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA26-020.HTM

<寸言>
水の惑星と言われる我が地球。一部の人達が神が創造したと主張するこの地球。

広大な宇宙にも地球のような高等生命が宿る惑星はないと断言してきた多くの識者たち。
しかし、我々が住む銀河系には太陽のような恒星は少なくとも約2000億個はあるだろうと言われている。また、そんな広大な銀河系も7兆個以上あると言われている
そうなると,地球のような惑星は、1000億分の1の確率でしか存在しないとしても、14兆個以上もある可能性があるということになる。だから、地球に似た惑星に人類が到達することができないとしても、地球人以上の高等な知的生命体が存在する確率(割合)が非常に小さいとしても、数の上では膨大に存在するという科学的裏付けがあることはよく頭にいれておいたほうがよいだろう。
それから、そのようなとてつもない広大な宇宙さえも、現代の最先端の宇宙理論(最有力理論)では無数あると言われれていること(いわゆるマルチバース理論)は、人間の思考能力の素晴らしさとともに限界をあわせて考えさせてくれる。
universe_doredake-okii

「井の中の蛙」状態を治してくれる非個人的な興味

andromed universe_earth_human-beings 非個人的な興味(私心のない興味)は全て、気晴らしとして重要であることはさておき、他にも様々な効用がある。まず第一に、こういう興味は、バランス感覚を保持することの手助けとなる。私たちは、自分たちの職業や、自分たちの仲間社会、自分たちの仕事の種類に非常にたやすく没頭するために、それらが人間活動全体の中のいかに小さな部分でしかないか、また、私たちの活動によって、世界中のいかに多くのものがまったく影響されないかということを、忘れてしまう。

All impersonal interests, apart from their importance as relaxation, have various other uses. To begin with, they help a man to retain his sense of proportion. It is very easy to become so absorbed in our own pursuits, our own circle, our own type of work, that we forget how small a part this is of the total of human activity and how many things in the world are entirely unaffected by what we do.
出典: The Conquest of Happiness, 1930, chap. 15: Impersonal Interests]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA26-020.HTM

<寸言>
人間はどうしても「」(現在/現代等)と「ここ」(日常的空間/自国等)にしばられがちである。それとは対極的に,現代物理学(や宇宙論)を少し知るだけで、個々の人間やこの地球が広大な宇宙(空間及び生成の歴史)からみるといかにちっぽけなものであるか、誰にでも実感できる。
しかし、そのことを多くの人が頭で理解していても、すぐに個人や自分の家族や自国などの狭量な視野にとらわれて短期的な利益を重視し、長期的にみれば不幸を招くことが少なくないことをやってしまう。短期的利益を求める国の政策(トランプが今やっていることも)も同様である。その最たるものは戦争(特に世界大戦)であるが、戦後50年(現在は70年以上経過)もたてば忘れてしまう。
災害は忘れた頃にやってくるのことわざがあるように・・・。

気分転換のやり方の上手下手

DOKUSH08 また,仕事以外について興味をたくさん持っていれば,持っていない場合よりも,仕事を忘れるべきときに忘れることがずっと容易になる。ただし,こういう興味は,一日の仕事で使い果たしてしまったところの能力を使うものであってはならないというのは,最重要なことである。こうした興味は,意志とか即座の決断とかを伴うものであってはならず,ギャンブル(賭け事)のように金銭的な要素を含むものであってもならず,また,原則として,感情を疲労させ,意識だけでなく無意識の心の注意をうばうほど興奮させるものであってはならない。

And it is very much easier to forget work at the times when it ought to be forgotten if a man has many interests other than his work than it is if he has not. It is, however, essential that these interests should not exercise those very faculties which have been exhausted by his day’s work. They should not involve will and quick decision, they should not, like gambling, involve any financial element, and they should as a rule not be so exciting as to produce emotional fatigue and preoccupy the subconscious as well as the conscious mind.
出典: The Conquest of Happiness, 1930, chap. 15: Impersonal Interests]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA26-010.HTM

<寸言>
気分転換のうまい人とへたな人。

Dino_dances 金銭づく・損得づくのものの場合には,気分転換になっているつもりでも,実際はそうなっていない場合が多い。スポーツ観戦であっても,自分が応援しているチームや選手が敗ける試合は気分転換になるどころか,精神的疲労をもたらすものになってしまう。酒や煙草も,量を厳格にコントロールできる意志力のある人の場合はある程度気分転換になるだろうが,長い目で見れば,健康の面で悪い影響を与える場合が多い少しくらい寿命を縮めても,好きなものを食べたり飲んだりしたほうよいと主張しても,体をこわせば反省することになる。
後悔先にたたず。

明日は明日の風が吹く - ケセラセラ(Que Sera, Sera)

Que-Sera_Sera_Doris-Day 仕事が終われば仕事のことは忘れ,翌日再開するまで思い出さない人は,その間ずっと仕事のことを気にかけている人よりも,ずっとよい仕事をしそうである.
https://www.youtube.com/watch?v=2uBiLsQl8v8
The man who can forget his work when it is over and not remember it until it begins again next day is likely to do his work far better than the man who worries about it throughout the intervening hours.

出典: The Conquest of Happiness, 1930, chap. 15: Impersonal Interests]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA26-010.HTM

<寸言>
単純な事実であり,多くの人がそう思っている。しかし,このことを実感し,体得するまでには,少し時間(や経験や訓練)がかかるのが普通。
仕事と余暇の切り替えがうまくできるようになれば後は楽になる。ただし,宮仕えしている場合には,急な仕事や依頼をうまくさばく知恵や技術を身につける必要がある。

不都合な真実や事実に目を塞ぎたい大人ー子どもを守るためと言いながら・・

saru_mizaru-iwazaru-kikazaru 子供は’ごまかし’を嫌うが,通常,そのような気持ちは年をとれば消滅する。(従って)子供に不快な真実を知らせない慣行,決して大人たちが考えるように子供たちのために採用されたのでない。それは大人にとって卒直さが苦痛であるがゆえに採用されるのである。

They have a dislike of humbug, which usually disappears in later life. The habit of screening them from the knowledge of disagreeable truths is not adopted for their sakes although adults may think it is; it is adopted because adults themselves find candour painful.
出典:Bertrand Russell: On Protecting Children from Reality,Oct. 5, 1933. In: Mortals and Others, v.1 (1975)]
詳細情報:http://russell-j.com/CHILD-P.HTM

<寸言>
inconvenient_truth_trump 現実を直視することが苦痛であっても,現実から逃げないで直視し続ければしだいに慣れていく。それに対し自分や自国に不都合な真実から目をそらしてきた場合には,なんとかしてそういった事柄はなかったことにしてしまい,真実があかるみに出そうになると,個人情報の保護や偏向だ,特定秘密だ,自虐だと言って,そういった報道や言動をつぶそうとする

由らしむべし知らしむべからず - 従順な国民づくり

G-Orwell_most-effective-way-to-destroy-people しかし,たとえば,ある特定の地域に住む人間やある金額を越える収入を稼ぐ人間は特別な長所を持っているといったような,政府当局が基本としている信念の大半は,これと同じはずである。正しく推論を行う方法を(生徒や学生に)教えると,これらの信念の基礎を掘り崩す恐れがあるため,民衆(国民)に正しく推論する方法を教えることは(為政者である政治家にとって)好ましくないのであろう。この種の信念が色褪せれば,人類の災厄は回避されるが,政治家は災厄を逃れることはできない。それゆえ,(政治家・統治者は)いかなる代償を払っても,我々(被統治者・被選挙民)を愚鈍な状態にしておかなければならないのである。

But so are most of the beliefs upon which governments are based, such as the peculiar merit of persons living in a certain area, or of persons whose income exceeds a certain sum. It would not do to teach people to reason correctly, since the result would be to undermine these beliefs. If these beliefs were to fade, mankind might escape disaster, but politicians could not. At all costs, therefore, we must be kept stupid.
出典:Bertrand Russell: On astrologers,Oct. 2, 1933. In: Mortals and Others, v.1 (1975)]
詳細情報:http://russell-j.com/ASTROLOG.HTM

<寸言>
由らしむべし知らしむべからず。
tokuteihimitu_abe
国民は愚かで従順なほうが統治し易いので、自分たちに都合の悪い情報はできるだけ広まらないように務める。どうしても広まりそうであれば、それを打ち消す、あるいは緩和するための情報を,御用学者や御用マスコミを使ってばらまこうとする。そのための方法は,協力者に対する「助成金」や「賄賂」だけでなくポスト(官職の地位)や各種審議会や委員会の委員への指名、いろいろな権限の付与、叙位叙勲者の恣意的な選択、愛人の手配、その他、いろいろな手がある。

「首尾一貫した目的を持つこと」の重要性

DOKUSHO3 人生を一つの全体としてながめる習憤は,知恵と真の道徳の,いずれにとっても,必要不可欠な役割であり(役割を果たしており),教育において奨励されるべき事柄の1つである。首尾一貫した目的だけでは,人生を幸福にするのに十分ではない。しかし,それは,幸福な人生のほぼ必須の条件である。そして,首尾一貫した目的は,主に,仕事においてその具現化が行われる。

neet_hikikomoriThe habit of viewing life as a whole is an essential part both of wisdom and of true morality, and is one of the things which ought to be encouraged in education. Consistent purpose is not enough to make life happy, but it is an almost indispensable condition of a happy life. And consistent purpose embodies itself mainly in work.
出典:ラッセル『幸福論』第14章「仕事」
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA25-060.HTM
<寸言>
(注:安藤訳及び片桐訳では次のようになっています。安藤訳(岩波文庫):「人生を一つの全体としてながめる習憤は,知恵と真の道徳のどちらにとっても,必要不可欠な部分であり,教育において促進されるべき事柄の1つである。」 片桐訳(みすず書房):「人生を一つの全体としてながめる習憤は,知恵と本当の道徳の両方にとって,欠かすことのできない役割を果たす,そしてこれは教育において促進されるべきこどのひとつだ。」

part はここでは安藤訳のように「部分」ではなく「役割」と訳したほうがより適切であり, of wisdom of true morality  の of は,片桐訳のように「知恵と道徳の両方★にとって」という意味ではなく,「知恵と道徳の両方★の」と解釈すべきと考えます。つまり,「・・・習慣は,・・・果たす」のではなく,その役割(「人生を一つの全体としてながめる」こと=役割)を果たすのはあくまでも「知恵」や「本物の教育」(の役割)だと考えます。片桐氏のように「~にとって」としたければ、an essential part for both … としなければならないでしょう。)