子供には,敗けた側に自然に味方したくなるような戦いからまず教えるとよい

yaeno-sakura それから,(子どもに)歴史を教えるときには,戦争のことについて全て話してもよい。しかし,戦争について話をするときには,最初は,敗者に対し同情がまず寄せられなければならない。私なら,負けた側に自然に味方したくなるような戦い--たとえば,イギリスの少年に教える場合は,ヘイスティングズの戦い--から始めたい。私は常に,戦争によってもたらされた負傷や苦痛を強調したい(強調して話したい)。
私は,子供たちを,戦争の話を読んでも,まったく党派根性を感じないで,また,どちらの側も平静さを失った愚かな人間集団であり,良い子になるまで保母によってベッドに寝かしつけられなければならないと考えるように,除々にもっていきたい。私は,戦争を子供部屋における子供同士のけんかと同質化したい(同じものと感じさせたい)。
このようにすれば,子供たちに戦争の真相(実相)を悟らせ,戦争が馬鹿げたものであることをわからせることができる,と私は信じている。

Then history may be taught, with all its wars. But in telling about wars, sympathy, at first, should be with the defeated. I should begin with battles in which it is natural to feel on the side of the beaten party–for instance, the battle of Hastings in teaching an English boy. I should emphasize always the wounds and suffering produced. I should gradually lead the child to feel no partisanship in reading about wars, and to regard both sides as silly men who had lost their tempers, and ought to have had nurses to put them to bed till they were good. I should assimilate wars to quarrels among the children in the nursery. In this way I believe children could be made to see the truth about war, and to realize that it is silly.
出典: On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 2:Education of character, chap. 11: Affection and Sympathy
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/OE11-150.HTM

[寸言]
oichinokata_rakujo 子供には,敗けた側に自然に味方したくなるような戦いからまず教えるとよい,というラッセルのアドバイス。

日本の戦争については、会津白虎隊の話とか、信長に滅ぼされた浅井長政の話などから始めるとよいかも知れない。ちなみに、浅井長政は(信長の妹である)妻のお市の方(豊臣秀吉の側室茶々の母親)に落城寸前の城から子どもを連れて逃げて生き延びるように言ってから自害している。戦争の残酷さ、不条理、無意味さを子どもに理解させるのに最適か?

愛国心教育をまず思い浮かべる政治家といかに発想が異なることか。