数学は(両親なき後)祖母に育てられた孤独なラッセルの希望の星であった

PHOTO4 (幼児期朝は非常に早く目が覚め,時々金星が出ているのが見えた。ある時,金星森の中のランタン(角灯)と見まちがえた。たいていの朝,日の出を見たし,4月の晴れた日には時々家から抜け出して,朝食前に長い散歩をよくした。日没(の太陽)が大地を赤く染め,雲を黄金色に染めるのを見まもった。風の音に耳を頓け,雷の稲光りに歓喜した。(写真:祖父母の自宅 Pembroke Lodge の庭から西方を望む/松下が1980年8月に撮影)
幼少時代を通じて,孤独感がしだいに増すとともに,誰か語り合うことのできる人間に会うことについて(会えないのではないかという)絶望感がしだいに増していった。(そうして)自然と本と(後には)数学が,私が完全に意気消沈するのを救ってくれた。

In the morning I woke very early and sometimes saw Venus rise. On one occasion I mistook the planet for a lantern in the wood. I saw the sunrise on most mornings, and on bright April days I would sometimes slip out of the house for a long walk before breakfast. I watched the sunset turn the earth red and the clouds golden; I Iistened to the wind, and exulted in the lightning. Throughout my childhood I had an increasing sense of loneliness, and of despair of ever meeting anyone with whom I could talk. Nature and books and (later) mathematics saved me from complete despondency.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.1, chap. 1, 1967]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB11-210.HTM

[寸言]
br_young11 ラッセルは3歳までに両親が亡くなり、(兄とともに)祖母に引き取られて育てられることになった。しかし、祖母は深い愛情をもってはいたが孫を厳しく育てた。従って,両親に甘えるような愛情を経験することができなかった。(添付写真は11歳の時のラッセル)
この孤独感はラッセルが18歳の時ケンブリッジ大学に入学して生涯の友を得るまで続くことになる。ある意味では、この孤独感は生涯続くが、結婚し、1921年に長男が(再婚相手との間に)生まれることにより、かなりやわらぐことになる。
その後、自殺衝動がたびたび訪れるが,数学をもっと知りたい・研究したいという欲求がラッセルを自殺から救うことになる。