多くの価値ある情緒や重要な思考は,長い静かな時間の結果としてのみ生まれてくる。過去の情緒的及び哲学的な物の見方にあったこの要素は,今や滅びつつある。
一方,過去において倦怠感と耐え難い単調さが生み出した残虐と狂気もまた,減少しつつある。従って,差し引きの結果,多分,得る方が勝っているだろう。
けれども,事情がどうであろうとも,この物の見方の変化(や心理的変化)は明らかに深刻であり,また今後も進展するだろう。
Many valuable emotions, and much important thinking, can only grow up as the result of long periods of quiet. These elements in the emotional and philosophical outlook of the past are now decaying.
On the other hand, the cruelty and madness which in former ages were generated by boredom and unendurable monotony are also growing less. Perhaps therefore there is gain on the balance. However that may be, the mental change is certainly profound, and still only half completed.
出典:On locomotions, Mar. 11, 1932. In: Mortals and Others, v.1 (1957)
詳細情報:http://russell-j.com/IDO.HTM
[寸言]
早く結果を出すことばかり考える人間を大量生産しようという現代教育のありかた(たとえば,文科省から国立大学に最近出された通達)。成果主義,競争礼賛,格差の拡大への無関心,他者の痛みに対する無感覚。
もちろん,昔に比べて改善されたものも多い。残酷さに対する無感覚は世界的に減りつつあり、人口問題や環境問題を解決できれば、世界がより豊かに暮らせるようになる「可能性」は高まっている。
しかし,気になるのは,経済成長のために現在行われている諸施策がますます格差(経済格差,教育格差, 非正規労働者の増加,その他いろいろ)を生み出していくことはほぼ確実だと思われるのに,為政者は知らない素振り。