肉体的な危険以外の事柄について勇気のある男性は,それがどのような事柄であれ,良くは思われない。たとえば,世論を無視することは,一つの挑発(行為)とみなされ,その権威をあえて馬鹿にした人を,世間は,あらゆる手段をつくして罰しようとする。これらはすべて,あるべき姿にまったく反することである。
(しかし)男女を問わず,あらゆる形の勇気は,軍人において肉体的な勇気が称賛されるのと同様に,称賛されなければならない。
The man who is courageous in any matter except physical danger is also thought ill of. Indifference to public opinion, for example, is regarded as a challenge, and the public does what it can to punish the man who dares to flout its authority. All this is quite opposite to what it should be.
Every form of courage, whether in men or women, should be admired as much as physical courage is admired in a soldier.
出典:The Conquest of Happiness, 1930, chapt. 5: Fatigue.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA15-070.HTM
[寸言]
「多数意見に従っておけば安心」ということで,あくまでも自分の頭で考え,自分で判断するということをしない人が少なくない。その深層心理は,多数意見に従っておけば,間違っていることが後からわかっても,多くの人が間違ったのだからと,自分を簡単に許すことができるからかも知れません。(街頭インタビューの答えがつまらない理由はこの態度で多くの人が答えるから。)
他国と戦争になった時に,反戦の立場に立つと,「臆病者」よばわりされたり,「非国民」のレッテルを貼られたりします。戦争というのは極端な場合ですが,世間の多数意見に反対するときにはかなりのエネルギーや勇気が必要です。しかし,残念ながら,日本社会はそういったものに対する寛容度がまだ低いと言わざるをえません。(反戦デモをしていたことがわかると就職に不利とか・・・。