民主主義理論に推進力を与えたのは,疑いもなく,ねたみ’の情熱である。ロラン夫人(フランス革命の時のジロンド派指導者の1人)は,しばしば,民衆に対する献身の念から行動した高貴な女性だとされているが,彼女の『回想録』を読んでみると,彼女をあれほど熱烈な民主主義者にしたのは,ある貴族の館を訪れた折に召使い部屋に案内された経験であったことがわかる。
出典:ラッセル『幸福論』第6章「ねたみ」
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA16-010.HTM
And the passion that has given driving force to democratic theories is undoubtedly the passion of envy. Read the memoirs of Madame Roland, who is frequently represented as a noble woman inspired by devotion to the people. You will find that what made her such a vehement democrat was the experience of being shown into the servants’ hall when she had occasion to visit an aristocratic chateau.
[寸言]
ねたみ(envy)と嫉妬とを混同する人が時々いるようです。
ロラン夫人はフランス市民革命の時にギロチン台で処刑されましたが,次の言葉は有名なのでご存知の方も多いと思います。
「自由よ、汝の名の下でいかに多くの罪が犯されたことか・・・」
才色兼備だったロラン夫人は,「平民出身だったために貴族に受けいられず、共和主義者になった。」とのことです。ラッセルは「彼女の『回想録』を読んでみると,彼女をあれほど熱烈な民主主義者にしたのは,ある貴族の館を訪れた折に召使い部屋に案内された経験であったことがわかる。」と書いていますが,「名誉」貴族にでもしてもらったら,人民を苦しめる側にたったかも知れないということです。
たとえて言えば,御用学者になれれば,権力者の番犬になる人が少なくないということでしょうか?