ラッセル=アインシュタイン宣言より

gca_xenophobia ・・・。さて,ここに私たちが皆さんに提出する問題,きびしく,恐ろしく,そして避けることのできない問題がある -即ち,私たちは人類に絶滅をもたらすか,それとも人類が戦争を放棄するか? 戦争を廃絶することはあまりにも困難であるという理由で,人々はこの二者択一という問題を面と向かってとり上げようとしないであろう。
戦争の廃絶国家主権に不快な制限を要求するであろう。しかし,おそらく他のなにものにもまして事態の理解をさまたげているのは,「人類」という言葉が漠然としており,抽象的だと感じられる点にあるだろう。危険は単にぼんやり感知される’人類’に対してだけではなく,自分自身や自分の子どもや孫たちに対して存在するのだが,人々はそれを想像力を働かせることによって認識することは,ほとんどできない。人々は個人としての自分たちめいめいと自分の愛する者たちが,苦しみもだえながら死滅するという,切迫した危険状態にあるということをほとんど理解していない。そうして人々は,近代兵器さえ禁止されるなら,戦争は継続してもかまわないだろう(大丈夫だろう)と,思っている(希望的観測をしている/楽観している)。
この思い(希望)は幻想である。たとえ水爆を使用しないといういかなる協定が平時(平和時)に結ばれていたとしても,戦時にはそのような協定はもはや拘束とは考えられず,戦争が起こるやいなや双方とも水爆の製造にとりかかるであろう。なぜなら,もし一方が水爆を製造して他方が製造しないとすれば,水爆を製造した側はかならず勝利するにちがいないからである。・・・。

Here, then, is the problem which we present to you, stark and dreadful and inescapable: Shall we put an end to the human race; or shall mankind renounce war? People will not face this alternative because it is so difficult to abolish war.
The abolition of war will demand distasteful limitations of national sovereignty. But what perhaps impedes understanding of the situation more than anything else is that the term ‘mankind’ feels vague and abstract. People scarcely realize in imagination that the danger is to themselves and their children and their grandchildren, and not only to a dimly apprehended humanity. They can scarcely bring themselves to grasp that they, individually, and those whom they love are in imminent danger of perishing agonizingly. And so they hope that perhaps war may be allowed to continue provided modern weapons are prohibited.
This hope is illusory. Whatever agreements not to use H-bombs had been reached in time of peace, they would no longer be considered binding in time of war, and both sides would set to work to manufacture H-bombs as soon as war broke out, for, if one side manufactured the bombs and the other did not, the side that manufactured them would inevitably be victorious.
出典:ラッセル=アインシュタイン宣言(1955年7月9日発表)
詳細情報:http://russell-j.com/RUSSELL-EINSTEIN.HTM

[寸言]
憲法9条の「国家の交戦権の放棄」は非現実的だと主張する政治家の非現実性。人類が戦争を廃止できる体制(世界連邦政府)をつくるのが先か、それとも戦争(核戦争)が人類をほろぼす(あるいは文明をほろぼす)のが先か!? ・・・。