核(兵器)の危険は,各国政府が核兵器を保持する間存続しそうな危険(な状態)を,また,もしそのような破壊力のある物体(大量破壊兵器)が個人の手に渡ればもっと長びきそうな危険(な状態)を表していた。最初私は,一般の人々をこうした危険に目ざめさせる仕事は非常に困難な仕事だとは思っていなかった。私は一般の通念と同じように,自己保存の本能は非常に強力なものであって,それが働けば通常他の全てのものを圧倒すると信じていた。一般の人々は,自分の家族や隣人たちやその消息について聞いたことのあるすべての今生きている人たちとともに(核兵器によって)焼かれてしまうという’予想’を好まないだろう,と私は考えた。そして,核の危険を一般に知らせることだけが必要であり,知らせ終えれば,いかなる党派に属する人でも以前の安全を回復するために結束するだろう,と私は考えた。
しかしその考えが間違いだということがわかった。自己保存の本能よりもっと強い本能があるのである。それは他の人間よりも優越したいという欲望である。私は –私自身も見過していたことであるが– しばしば見過されているある重要な政治的事実があることに気がついた。即ち,,人々は自分たち自身が生き残ることを --あるいは,事実はそれどころか人類の生き残ることを 自分の敵を絶滅させることほど心配しない,という事実である。(イラスト出典: Bertrand Russell’s The Good Citizen’s ALphabet, 1953--Jolly – Downfall of our enemies)
The nuclear peril represented a danger which was likely to last as long as governments possessed nuclear weapons, and perhaps even longer if such destructive objects get into private hands. At first I imagined that the task of awakentng people to the dangers should not be very difficult. I shared the general belief that the motive of self-preservation is a very powerful one which, when it comes into operation, generally overrides all others. I thought that people would not like the prospect of being fried with their families and their neighbours and every living person that they had heard of. I thought it would only be necessary to make the danger known and that, when this had been done, men of all parties would unite to restore previous safety. I found that this was a mistake. There is a motive which is stronger than self-preservation : it is the desire to get the better of the other fellow. I have discovered an important political fact that is often overlooked, as it had been by me: people do not care so much for their own survival – or, indeed, that of the human race – as for the extermination of their enemies.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3, chap. 4:The Foundation, 1969]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB34-010.HTM
[寸言]
幼児的な我儘な感性しか持ち合わせていない北朝鮮の指導者。キチガイに刃物(核兵器、特に水爆)のあやうさ。そういった権力者に幻想を抱かせてはならないが、だからといって、核兵器を搭載できる戦略爆撃機B52を低空飛行で飛ばして相手に恐怖心を与え、もし北朝鮮が核兵器(水爆は実際は所有しておらず多分原爆のみ)を使うような可能性がある場合には、(核兵器が使われたら大変なので)韓国の国民を守るために核兵器の先制使用も辞さないという態度をとる米国にも違和感を覚える。日本中の都市が米軍のB29爆撃機によって焦土と化した姿を実際に目にした年配の人なら特にそう思うのではないか?