『社会再建の原理』(1916年)の出版で多額の収入を得る

tp-psr その本(1916年,ラッセルが44歳の時に出版した『社会再建の原理』)の中に,私は,人間生活の形成において,意識的な目的よりも衝動の方がより影響力をもつという信条に基づいた政治哲学を提示した。私は,衝動を,所有的衝動と創造的衝動の,2つのグループに分け,最善の生活は大部分創造的衝動の上に築かれると考えた。私は,所有的衝動が具現化された実例として,国家,戦争,貧困をあげ,創造的衝動の実例として,教育,結婚,宗教をあげた。創造性の解放(発揮)が,改革の原理であるべきであると,私は確信していた。私は,当初,この本を(数回の)講演用として献じたが,後になって出版した。驚いたことに,たちどころに成功をおさめた。私は,読まれるだろうという期待はまったくなしで,ただ信条の告白として,本書を執筆した。しかし,この本は,私に大金をもたらし,その後の私の所得の基礎をおいた

In it (= The Principles of Social Reconstructio, 1916) I suggested a philosophy of politics based upon the belief that impulse has more effect than conscious purpose in moulding men’s lives. I divided impulses into two groups, the possessive and the creative, considering the best life that which is most built on creative impulses. I took, as examples of embodiments of the possessive impulses, the State, war and poverty; and of the creative impulses, education, marriage and religion. Liberation of creativeness, I was convinced, should be the principle of reform. I first gave the book as lectures, and then published it. To my surprise, it had an immediate success. I had written it with no expectation of its being read, merely as a profession of faith, but it brought me in a great deal of money, and laid the foundation for all my future earnings.
出典:The Autobiography of Bertrand Russell, v.2 chap. 1:The First War, 1968
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB21-090.HTM

<寸言>
rainichi ラッセルは The Principles of Social Reconstructio, 1916 (『社会再建の原理』)の出版前に,9冊の単行本をだしていましたが,The Problems of Philosophy, 1912 (『哲学の諸問題(通称『哲学入門』)』)がそこそこ売れた他は,いわゆるベストセラーものはありませんでした。しかし,『社会再建の原理』がかなり売れたことにより、一般大衆向けの本(ラッセルが言う popular books)の著者としても自信をもつようになりました
この本は,第一次世界大戦時に書かれたため、世界的な影響を与え、ラッセルは偉大な哲学者というだけでなく、平和主義者として世界的に知られるようになりました。また、ラッセルは大正時代の日本の知識人の多くに強い影響を与え、ラッセルが大正10年夏に2週間訪日した際には、一大ラッセル・ブームが起こり、数紙の全国紙がラッセルの一挙手一投足を連日報道しました
(なお,ラッセルの日本訪問は、当時の進歩的な雑誌『改造』を出していた改造社の働きかけによって実現したものですが、その翌年のアインシュタインの訪日は、山本社長が当時の代表的な偉人は誰か,ラッセルの次に日本に呼ぶとしたら誰がよいか質問したところ、その一人にアインシュタインをあげたことを受けたものです。)