自分の子供が欲しいという強い欲求-ドーラとの恋愛

dorablk ドーラと私は,ルルワース(Lulworth)に彼女が来た時,恋人同士になった。彼女がルルワースに滞在していた夏の期間(注:夏の全期間ではなく,ドーラがいた期間)は,この上なく楽しいものだった。私とコレットとの間の主要な困難は,彼女が子供を持つことをいやがったことであり,また,私が子供を持つつもりであればこれ以上この問題を棚上げにしておくことはできないと私が感じたこと,であった。ドーラは,結婚をするしないにかかわらず,心から子供を持ちたがっており,それで,私たちは初めから予防措置をとらなかった(避妊しなかった)
彼女は,二人の関係が即座といってよいほど早く結婚と全く同じ性質を帯びてしまったことに気づき,少し失望した。また,私が,(1911年以来,長期間別居中のアリスと)離婚をして彼女と再婚できればうれしいと言うと,彼女は突然泣き出してしまった。結婚は’自立’と’気楽さ’の終焉を意味すると感じたからであろう。しかし,私たちが共有した感情には,ふまじめな関係をいっさい不可能にするような安定性があったように思われる。彼女の公的な能力(有能さ)のみを知っている人たちは,責任感が彼女に重くのしかからない時にはいつも持っていた小妖精のような魅力という特質を彼女がもっているなどとはほとんど信じられないだろう。彼女は月明かりで(月明かりを頼りに)水浴びをしたり,あるいは,露で濡れた草の上を裸足で走ることによって,,私の親になりたいという欲求及び社会的責任感に強く訴えかけた彼女の真面目な面と同じように,完璧に,私の想像力をとらえた(勝ちとった)のである。

Dora and I became lovers when she came to Lulworth, and the parts of the summer during which she was there were extraordinarily delightful. The chief difficulty with Colette had been that she was unwilling to have children, and that I felt if I was ever to have children I could not put it off any longer. Dora was entirely willing to have children, with or without marriage, and from the first we used no precautions. She was a little disappointed to find that almost immediately our relations took on all the character of marriage, and when I told her that I should be glad to get a divorce and marry her, she burst into tears, feeling, I think, that it meant the end of independence and light-heartedness. But the feeling we had for each other seemed to have that kind of stability that made any less serious-relation impossible. Those who have known her only in her public capacity would scarcely credit the quality of elfin charm which she possessed whenever the sense of responsibility did not weigh her down. Bathing by moonlight, or running with bare feet on the dewy grass, she won my imagination as completely as on her serious side she appealed to my desire for parenthood and my sense of social responsibility.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2 chap. 2:Russia, 1968]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB22-030.HTM

<寸言>
FAM-1924 ラッセルは1911年に(初婚相手の)アリスと別居してから,オットリン(モレル)夫人やコレット(マレソン夫人)などと恋愛しますが,自分の子供が欲しいとの強い欲求をラッセルは満たすことができませんでした。
ところが,ドーラ及び彼女の友達などとキャンプファイアーに火を囲んでおしゃべりしている時に、ドーラが自分は早く子供が欲しいと言っているのに印象づけられ、彼女に強い関心を持つようになります。
紆余曲折を経て二人は結婚し、二人の子供(ジョンとケイト)を持つことになり、そうして、自分たちの子供をよい環境で教育したいと、兄の別送を借りて、幼児学校(Beacon Hill School)を開設することになります。
そうして、しばらく幸せな日々が続きますが・・・。