「何か怖いことがない限り,常に本当のことを言いなさい」というのが,私が幼年時代に教え込まれた格言であった。私は,このような例外を認めることはできない(=怖い時でも本当のことを言うべきである)。恐怖は,行動だけでなく,感情においても克服されなければならない。しかも,意識された感情だけでなく,無意識の感情においても同様に克服されなければならない。
貴族主義的な道徳律を満足させる(だけの)恐怖に対する単なる外面的な勝利は,意識下で働く(作用する)恐怖の衝動を残し,恐怖の申し子として認識されない’邪悪なねじれた反応‘を生じさせる。
‘Always speak the truth except when something frightens you’ was a maxim taught to me in childhood. I cannot admit the exception. Fear should be overcome not only in action, but in feeling; and not only in conscious feeling, but in the unconscious as well. The purely external victory over fear, which satisfies the aristocratic code, leaves the impulse operative underground and produces evil twisted reactions which are not recognised as the offspring of terror.
出典:On Education, especially in early childhood, 1926, chap. 2 The Aims of Education
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/OE02-130.HTM
<寸言>
不合理な恐怖心を持つのはよくない。だからといって,そのような恐怖を持つようになる原因-心理的なものも含む-を理解しないで,ただ単に精神主義的な「勇気(蛮勇)」でもって恐怖心を押さえ込むのはよくない。そのように無理やり意識下に押さえ込むと,他人に対する無意識的な残酷な態度など,恐怖心はねじれた邪悪な発露を見つけだす。それゆえ,恐怖心は,意識された感情だけでなく,無意識の感情においても同様に克服されなければならない。