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ジョウゼフ・コンラッド『闇の奥』

 彼の書いたものの中で私が最も賞賛したのは,『闇の奥』と名付けられた恐ろしい物語(小説)であった。その物語(小説)のなかで,かなり気弱い理想主義者は,熱帯地方の森(ジャングル)の恐怖(注:いつ獣が襲いかかってくるかも知れないという恐怖)と未開人に囲まれた孤独(注:言葉か通じないことによる孤立)のために気が狂ってしまう。この話は,彼の人生哲学を最も完璧に表現している,と私は考える。彼がそのようなイメージ(想像)を受け入れたかどうかわからないが,彼は,文明化された,また,道徳的に何とか我慢できる,人生を,いつ破れて灼熱の深い底(fiery depths いわば,火口)へと油断によって落ちていくかもしれない,ようやく冷えた熔岩の薄皮の上を歩くように危険なものだ,と思っているのではないか,と私は感じた。彼は人間が陥りやすい様々な狂気をはっきりと意識していた。これこそ,彼に規律(注:discipline ここでは外部からの規律ではなく,むしろ,自己規律)の重要性への深い信念を与えたものであった。彼の物の見方は,ルソーの考え方(注:人間は生まれながらにして自由)のアンチテーゼ(正反対)であると言ってよいだろう。即ち,「人間は鎖にしばられた状態で生れるが自由になることができる」。人間は彼の衝動を(ただ)放任することによってではなく,(また)因果律に従いかつ制御なしによってではなく,気ままな衝動を(自分が)最も大事だと思う目的に従わせることによって人間は自由になるのだとコンラッドは言ったのだろう,と私は信ずる

Of all that he had written I admired most the terrible story called The Heart of Darkness, in which a rather weak idealist is driven mad by horror of the tropical forest and loneliness among savages. This story expresses, I think, most completely his philosophy of life. I felt, though I do not know whether he would have accepted such an image, that he thought of civilized and morally tolerable human life as a dangerous walk on a thin crust of barely cooled lava which at any moment might break and let the unwary sink into fiery depths. He was very conscious of the various forms of passionate madness to which men are prone, and it was this that gave him such a profound belief in the importance of discipline. His point of view, one might perhaps say, was the antithesis of Rousseau’s: “Man is born in chains, but he can become free.” He becomes free, so I believe Conrad would have said, not by letting loose his impulses, not by being casual and uncontrolled, but by subduing wayward impulse to a dominant purpose.
出典: Joseph Conrad, 1953.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1040_CONRAD-020.HTM

<寸言>
コンラッドの名著(小説なので,名作)に『闇の奥』がある。コンラッドの小説の中でラッセルが最も気に入っているものであるが、これは有名な映画「地獄の黙示録」の原作である。舞台こそ、アフリカではなくベトナム(戦争)に移しているが、モチーフは同じである。