R. シェーンマンは「重大な事柄の中にユーモアを見出す能力に長けた青年」

Schoenman-R 1960年7月の終わり近くに,ラルフ・シェーンマン(Ralph Schoenman, 1935~ /右の写真及び下の写真の左端)という名前の若いアメリカ人が初めて私を訪ねて来た。彼がCNDに関連した活動をしていることをある程度聞いていたので,彼と会うことにかなり興味を抱いていた。彼は -政治に関して,経験がなく,少し理論に走るきらいがあるにせよ- エネルギーに満ちあふれ,アイデアに富んでおり,知的な人間であるということがわかった。また,私が信奉する主義主張において,残念ながら多くの労働者に欠けているところのもの,即ち,’風刺’を解する能力や,’本質的に非常に重大な事柄の中にユーモアを見出す能力’を彼は備えており,私は彼のそういうところも好きであった。彼はすぐ共感し,また激し易い人間であることがわかった。私が徐々にのみ理解するようになったことであり,時が経つにつれてのみ明らかになったことであるが,彼は反対されることに我慢することが困難であり,驚くほど完璧で比類がないほどの自信をもっていた。私は,経験を活かすためには知性にも’訓練’というものが必要だ,と信じていた。私は当初彼を十分に理解していなかったが,たまたまあることで彼に賛成し,続いて当時彼が活動していたことに賛成した。そうして,彼が個人的に私に対し絶えず示してくれた’寛大さ’に対し深く感謝したし,今日なお感謝あるのみである。彼の精神は,非常に敏速かつ確固たる動きをみせた。彼の精力は無尽蔵であるかのごとく思われた。物事をなしうるために,彼に頼りたいという誘惑にかられた。

19610912Towards the end of July, 1960, I received my first visit from a young American called Ralph Schoenman. I had heard of some of his activities in relation to CND so I was rather curious to see him. I found him bursting with energy and teeming with ideas, and intelligent, if inexperienced and a little doctrinaire, about politics. Also, I liked in him, what I found lamentably lackng in many workers in the causes which I espoused, a sense of irony and the capability of seeing the humour in what was essentially very serious business. I saw that he was quickly sympathetic, and that he was impetuous. What I came only gradually to appreciate, what could only emerge with the passage of time, was his difficulty in putting up with opposition, and his astonishingly complete, untouchable self-confidence. I believed that intelligence working on experience would enforce the needed discipline. I did not at first fully understand him but I happened to be approved of him and, in turn, to approve of what he was then working for. And for his continued generosity towards me personally I was, and can still only be, deeply grateful. His mind moved very quickly and firmly and his energy appeared to be inexhaustible. It was a temptation to turn to him to get things done.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3:1944-1969 ,chap3:Trafalgar Square,(1969)
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/AB33-150.HTM

[寸言]
ある日、R.シェーンマン(Ralph Schoenman, 1935~ )というアメリカの青年がラッセルを訪ねてきた。シェーンマンには若さがあり、精力があふれ、また才気があふれており、ユーモアを解した。老齢のラッセルは、平和運動において、シェーンマンにたよるようになっていき、そうして多くの成功を収めることができた。
しかし、しだいにシェーマンの強引さがめだつようになり、自分の意見なのにラッセルの意見であるとか、ラッセルの代理だと言ったりするようになっていった。
晩年(1969年12月/ラッセル97才の時)には、残念ながら、「メモランダム」を発表して、シェーンマンと断絶せざるを得なくなった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Ralph_Schoenman