「蛮勇」-危険を感知できない人間や無知な人間の危険性及び愚かさ

abe_sanakunin 我々のリストの3番目の性質(注:好ましい人間の特質)としてあげた感受性は,ある意味では,単に勇気を’矯正するものにすぎない。危険を感知することのできない人間にとっては,勇敢な行為は容易であるが,そういった勇気は愚かである場合が多い。無知や怠慢(=忘れっぽさ)に基づく行動(様式)は,いかなるものも満足すべきものと見なすことはできない。なぜなら,最大限充分に知り理解することは,望ましいもの全てにとって不可欠の要素だからである。

Sensitiveness, the third quality in our list, is in a sense a corrective of mere courage. Courageous behaviour is easier for a man who fails to apprehend dangers, but such courage may often be foolish. We cannot regard as satisfactory any way of acting which is dependent upon ignorance or forgetfulness: the fullest possible knowledge and realisation are an essential part of what is desirable.
出典:On Education, especially in early childhood, 1926, chap. 2 The Aims of Education
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/OE02-160.HTM

[寸言]
4-chara ラッセルは、合わさって「人間の理想的な性格」の基礎を形作ると思われる特質として、活力(Vitality),勇気(Courage),感受性(Sensitiveness),知性(Intelligence)の4つをあげている。
人間にとって不合理・非合理な恐怖心を持たずに「勇気」を持つことは、男女とも必要なものである。しかし,「蛮勇」はそうではない。後先を考えずに、国の為政者が「蛮勇」をふるって国民に大きな犠牲を強いた実例は、歴史上非常にたくさん存在している。ただし、(ドイツなど一部の国を除いて)どの国の為政者も、過去の古傷をさわられたくないために、「未来に目を向けよう」と一見もっともらしい美辞麗句で誤魔化そうとする。少なからぬ国民もそれに騙される人がおり、なげかわしい。