“All you need is love.”の「愛こそはすべて」は大誤訳!!

本日は、佐藤ヒロシ『関係詞の底力』の「はしがき」から少し引用しておきます
 p.2: “All you need is love.”の「愛こそはすべて」は大誤訳!!

2つの間違いがありそうです。”All”と”you”の間に関係詞が省略されていることに気づかない場合と、気づいているのに意味を取り違える場合です。私も長い間早トチリで「思い込んで」いましたが、ビートルズのこの英文の正しい日本語訳は、
君(あるいは、あなたたち)に足りないのは愛だけだ!( ← 君に必要な全ては愛だ)」となります。

佐藤氏は代々木ゼミ予備校を代表する英語講師の一人です。ラッセル関連で、一度だけお会いしたことがあります。(とても身長の高い方です。)プレイス社から『ラッセルと20世紀の名文に学ぶ(英文味 読の真相39』という本も出されているので、ご存じの方もおられると思います。

本書の裏表紙には、「All the people in Iraq want is peace and
security.」という例文が掲載されています。この場合も、「すべてのイラクの人々が欲しているのは、平和と安定だ」というのは誤訳であり、正しくは、「(現在の)イラクの人々が望んでいるのは、平和と安定だけだ!」ということになります。(したがって、平和が回復すれば、もっといろいろな欲求がでてきます。)

残念ながら、この2つの例文について、ラッセルの用例を見つけられませんでした。

最後に、佐藤先生の「はしがき」から少し言葉を引用しておきます。

p.2: まさに、「関係詞がわからないとビートルズも聴けない」のです。
p.3:  英語に「受験英語」とか「実用英語」といった2種類のものが存在するわけでもなく、ましてや「英会話」に「英文法」は必要ないなどとう俗説は誤りであるというのが、かねてからの私の持論です。批判されるとすれば、それは「受験英語」ではなく「英語指導法」であり、また「文法」ではなく、「どうでもいい文法用語による無意味な分類」であると私は考えます。//

ラッセル「人類に害を与えてきた思想(8)」

 誤った信念を産む最も強力な源泉の一つは,妬み(ねたみ)である。いかなる小さい町においても,もし比較的裕福な人々に尋ねてみれば,彼等はみな隣人の収入を誇張して考えており,そのことから隣人をケチ(meanness)だと非難することを正当化しているのがわかる(正当化しているのを見いだす)だろう。女性の嫉妬は男たちのあいだではよく知られている。しかし,大規模な事務所ならどこにおいても,まさに男性職員の間に同様の種類の嫉妬を見いだすであろう。(その職場の)男性職員の一人が昇進すると,他の男たちは次のように言うだろう。「ふん,あいつはお偉方に取り入る術を心得ているよ。もし私が自分を堕落させて,あいつが恥知らずにやったようなへつらい術を使っていたら,私もあいつとまったく同じように早く出世できたはずだ。たしかにあいつの仕事ぶりには線香花火のような才気(a flashy brilliance,)はあるが,堅実さに欠けている。それゆえ,遅かれ早かれ(←早かれ遅かれ),お偉がたは自分らの判断(昇進させたこと)の間違いに気づくだろう」。凡庸な男性はみな,もし(たとえ)本当にできる男がその才能に値する程度に早く昇格を認められたとしてもそのようにいうだろう。(注:ラッセル『人類の将来ー反俗評論集』の中の市井三郎訳では,「このように凡庸なすべての人々は、本当にできる男がその才能の値する程度に早く昇格できるようになればよい,というだろう」となっている。all the mediocre men will say so が倒置されて ‘So’ が先頭に来ているわけだが、’if’ は ここでは ‘even if’ の意味であることを捉え損なっていると思われる。) そしてこの理由から,年功序列制度を採用する傾向があるわけであり,それは功績とはなんの関係ももたないので,同様の妬みによる不満を生じさせないからである。

One of the most powerful sources of false belief is envy. In any small town you will find, if you question the comparatively well-to-do, that they all exaggerate their neighbors’ incomes, which gives them an opportunity to justify an accusation of meanness. The jealousies of women are proverbial among men, but in any large office you will find exactly the same kind of jealousy among male officials. When one of them secures promotion the others will say: ‘Humph! So-and so knows how to make up to the big men. I could have riser quite as fast as he has if I had chosen to debase myself by using the sycophantic arts of which he is not ashamed. No doubt his work has a flashy brilliance, but it lacks solidly, and sooner or later the authorities will find out their mistake.’ So all the mediocre men will say if a really able man is allowed to rise as fast as his abilities deserve, and that is why there is a tendency to adopt the rule of seniority, which, since it has nothing to do with merit, does not give rise to the same envious discontent.

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