ラッセル『権力-その歴史と心理』第7章 革命的な権力 n.8

 (皇帝と教会との間に)多くの争いがあったなかで,そのような争い(皇帝と教会との権力闘争)は,教会(ローマン・カトリック教会)の独立的な権力を確立した。教会が勝利をおさめたのは,一部は喜捨(慈善)のおかげであり,また一部は教会組織のおかげであったが,(それ以上に)主として,教会と対立する信条や感情で,勢いのあるものがまったくなかったという事実のおかげであった。ローマが征服を行っていた時は,ローマ人は,国家の栄光について強く感じることができた。なぜなら,ローマ(帝国)は,ローマ人の尊大な誇りを満足させたたからである。しかし,紀元4世紀には,そのような感情は消え去って既に久しかった。宗教に匹敵する力である国家に対する熱狂は,近代のナショナリズムの勃興によって初めて蘇った(のである)。

Chapter VII: Revolutionary Power, n.8

Such contests, of which there were many, established the independent power of the Church. Its victory was due partly to almsgiving, partly to organization, but mainly to the fact that no vigorous creed or sentiment was opposed to it. While Rome was conquering, a Roman could feel strongly about the glory of the State, because it gratified his imperial pride; but in the fourth century this sentiment had been long extinct. Enthusiasm for the State, force comparable with religion, revived only the rise of nationalism in modern times.
 出典: Power, 1938.
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