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ラッセル「自由人の十戒」(その6): 権力者による意見の抑圧

有害と思う意見を力で抑圧してはいけない。なぜなら,もし力で抑えれば,それらの意見は(将来)同じようにあなたを抑圧するようになるからである。
Do not use power to suppress opinions you think pernicious, for if you do the opinions will suppress you.
出典: A Liberal Decalogue, 1951 (This first appeared at the end of
his article ‘The best answer to fanaticism – liberalism’ in
New York Times Magazine, 16 Dec. 1951, p.42.]
詳細情報:http://russell-j.com/0972-ALD.HTM

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            「文化人」なら好きなことが言えるので・・・

[寸言]
多数決」だけが民主主義だと思っている,あるいはわざと歪曲してそのように国民に思わせようとする政党や政治家は,その「多数決」で政権を失うと(立場を変えて)その「多数決主義」を民主主義の「形骸化」と言って非難する。
abe_japan's-media_quailing 民主党が政権をとっている時、自民党は「TPP絶対反対」を唱えていたが、政権をとるとTPP絶対「賛成」を唱えて「強行採決」も厭わない。
結局は、事柄の是非というよりは、自分たちが主導権がにぎれる場合は(旨味があるので)推進するが、主導権をにぎれなければ可能な限り阻止しようとするだけという、低レベルさ。
マスコミを支配し、自分たちに都合の悪い情報はできるだけ国民の目に晒さないようにするのは「自信のなさのあらわれ」。国会議員は、みんなそこそこの役割を果たしているのであれば、国際基準では、多いとは言えないが、与党の方針に従って賛成票を投じるような、またレベルの低いタレント議員が多い現状では、国会議員は半分で十分であろう。

ラッセル「自由人の十戒」(その4・5)

その4:
反対意見には,家族の反対でも,議論で説得し,権威で勝とうとしてはいけない。権威を使っての勝利は,真の勝利ではなく,単なる幻にすぎないからである
When you meet with opposition, even if it should be from your husband or your children, endeavor to overcome it by argument and not by authority, for a victory dependent upon authority is unreal and illusory.

その5:
他人の権威を尊重するには及ばない。なぜなら,それが尊敬に値しない権威であると露見するのが普通だからである。
Have no respect for the authority of others, for there are always contrary authorities to be found.
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出典: A Liberal Decalogue, 1951
(This first appeared at the end  of his article ‘The best answer to fanaticism – liberalism’ in  New York Times Magazine, 16 Dec. 1951, p.42.)
詳細情報:http://russell-j.com/0972-ALD.HTM

[寸言]
日本では石原元知事,韓国では朴大統領、米国ではトランプ候補及びクリントン候補,・・・いずれも「尊敬に値しない権力者」であり・・・。

ラッセル「自由人の十戒」その2

ラッセル「自由人の十戒」その2

何事も証拠を隠してまでして,物事をはこぶ価値があると考えてはいけない。なぜなら,そういった証拠は必ず明るみに出るものだからだ。」

Do not think it worth while to proceed by concealing evidence, for
the evidence is sure to come to light.

[寸言]
 「由らしむべし知らしむべからず」の精神では,いずれほころびがでる。
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「上品な人々」の無知・無関心・思いやりの無さ

tokken-kaikyu 権力を握っている者,古今東西,恐怖心に駆られている場合を除けば,権力を持たない人間の幸・不幸に無頓着です。これは耳ざわりなひどい言葉に響くかも知れません。上品な人々は限度を越えて,他の人々に苦痛を与えないといえるかも知れません。こう口でいうことはできても,現実はそうでないことを示しています。今問題になっている上品な人々は,自分たちが幸福に暮らすためにどんな苦痛を他人に与えているかを,知らずに終わってしまったり,あるいは,知らないふりをするのに成功しています。

Holders of power, always and everywhere, are indifferent to the good or evil of those who have no power, except in so far as they are restrained by fear. This may sound too harsh a saying. It may be said that decent people will not inflict torture on others beyond a point. This may be said, but history shows that it is not true. The decent people in question succeed in not knowing, or pretending not to know, what torments are inflicted to make them happy.
出典:What is Democracy? 1953: Evils of Power.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AXIOM-2006X2015.HTM#20150716

[寸言]
bonbon_sekensirazu 想像力や理解力が不足しているので,自分がよく理解できない人たち(弱者)に対して思いやりを持つことができない表面的な理解しかできず,口では「国民のために」と言いながら、実際は「国民のために」ならない矛盾した政策を実行してもなんとも思わない。
一部の人間のためではなく国民全体のために、と言いながら、国民は一部の人々から出来ていることを理解しないで、一部の人々(結局は大部分の国民)に不幸をもたらす。
もちろん、国民自身も一部の人をおろそかにすれば結局は自分に跳ね返ってくることをよく理解しない人が少なくなく、・・・。

罪人に対する冷酷な感情の「偽装」-迫害の口実見~つけた

against-death-penalty 人々が良い感情を持つことを保証することは大変望ましいことであるが,それは説教によっては達成できない。それどころか,罪人を後悔させたいという願いを口実にその罪人への悪意を正当化することは,罪(の存在)を信ずることの影響の一つである。我々が罪に関する信念を放棄すれば,道徳を楯にして罪人に対する冷酷な感情を偽装する(隠す)ことは,ずっと難しくなる。
出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「教化・善導について」
詳細情報:http://russell-j.com/EDIFY.HTM

To ensure that people should have good feelings is extremely desirable, but it cannot be achieved by preaching. On the contrary, one of the effects of a belief in sin is to justify malevolence towards the sinner under the guise of a wish to bring him to repentance. When we get rid of the belief in sin, it becomes much harder to disguise our unkind feelings, under a cloak of morality.

[寸言]
dokush47 マスコミによる集団リンチ。マスコミだけが悪いわけではなく,多くの人が「いじめ」をのぞむ(迫害本能/サディスティックな欲求)ために,テレビや週刊誌などのマスコミがその材料を提供している。

民主主義が不可欠である理由 - 権力の「乱用」や「暴走」を防ぐこと

グレゴリウス七世が,聖職者の独身制度を強行しようとした時,一般信徒に助力を呼びかけた。彼ら一般信徒たちは,自らは幸福な結婚生活を享受しているにもかかわらず,教区牧師とその妻を迫害する機会を得たことを喜んだ。

tokken-kaikyu 民主主義が不可欠である理由は,このような人間性にひそむ本能の強さのためである。民主主義が望ましいのは,普通の選挙民が政治的叡知をもっているからではなく,権力を独占するいかなる集団も,必ず自分たち以外の人々はある特定の生活の便益を享受しないほうが望ましいと証明する理論を発明するがゆえに,そのことを予防するために必要なのである。このような傾向は,人間本性の中でも最も可愛げのないものの一つであるが,全ての階級及び男女両性への権力の公正な分配以外に十分な防護策はないことは,歴史が示している。

When Gregory VII was engaged in enforcing the celibacy of the clergy, he called in the help of the laity, who, even when happily married themselves, were delighted at the opportunity of persecuting parish priests and their wives.
It is the strength of this impulse in human nature that makes democracy necessary. Democracy is desirable, not because the ordinary voter has any political wisdom, but because any section of mankind which has a monopoly of power is sure to invent theories designed to prove that the rest of mankind had better do without the good things of life. This is one of the least amiable traits of human nature, but history shows that there is no adequate protection against it except the just distribution of political power throughout all classes and both sexes.
出典: On vicarious asceticism (written in Aug. 3, 1932 and pub. in Mortals and Others, v.1, 1975.]
詳細情報:https://russell-j.com/KINYOKU.HTM

[寸言]
自分が教師でなければ、「教師は聖職者であるべきだ」と教師を縛り、自分が官僚や公務員でなければ、「公務員の給料はできるだけ下げる必要がある」と主張する。つまり、ほとんどの人が自分が所属している階級・グループに対する制限は極力排除しようとするが、そうでなければできるだけ制限を加えようとする。

政治家も、「国民のため」とか、「国民の命を守るため」とかいろいろ言うが、自分も国民の一員だと言うことをあまり真剣に考えない。国民の誰もが何らかの事柄に関しては「少数者」である。だから、自分が気に入らない「少数者」を迫害したり、自由を制限するような規則を多く創っていけば、いずれ自分で自分の首をしめることになることに気づくべきである。

nobita_jibunde-jibunno-kubi-simeru 民主主義が一番必要なのは、権力の「暴走」を防ぐという性格であろう。「多数決原理」は、「少数意見を尊重」するという前提があって初めて生きてくる。しかし、最初に結論ありきで、議論にある程度時間をかければ、「決めるべき時は決める」を決断力だと(国民を)勘違いさせてどんどん「少数者」を苦しめる法律を大量に国会を通過させている。(最近は、議論の中身がなくても、時間をかければ「熟議」だとされている。)

 「誰もが何らかの点で少数者であり、少数者の権利を制限していくことは、結局は全国民が自分で自分の首をしめることになる」ということに、多くの国民が気づくようになるのはいつのことであろうか!?

現実的な政治家の非現実性

russell-einst_manifesto アインシュタインのような人物が戦争に関する自明な真理を世間に向かって言っているのに世間は耳をかさない。アインシュタインの言うことが難しくて理解できないかぎりは,彼は賢明な人物だと考えられるが,彼がすべての人が理解できることを述べると彼の知恵はもう底をついたと考えられる。この種の愚行において,各国政府は指導的役割を果たす。政治家政権にしがみついていたいために,自国を破滅に導いても構わないと考えるらしい。これ以上の邪悪さは容易に想像できない。

Men like Einstein proclaim obvious truths about war but are not listened to. So long as Einstein is unintelligible, he is thought wise, but as soon as he says anything that people can understand, it is thought that his wisdom has departed from him. In this folly, governments take a leading part. It seems that politicians would rather lead their countries to destruction than not be in the government. A greater depth of wickedness than this it is not easy to imagine.
出典: Do governments desire war? (written in Aug. 24, 1931 and pub. in Mortals and Others, v.1, 1975.]
詳細情報:https://russell-j.com/DESIRE-W.HTM

[寸言]
日本は法的拘束力のない核兵器全廃条約」を提出し続けてきたが、国連の「核兵器禁止条約」(法的拘束力のあるもの)に対しては、従来は「棄権」してきたが、今回は「反対」に回った。これは、米国側からアメリカの「核の笠」で守られてくる国がこの条約に賛成するのはおかしい(反対票を投じるように)との強い要請に応じたものであった。その見返りに、米国は、従来、日本提案の「核兵器全廃条約」(法的拘束力のない理想をのべたもの)を棄権してきたが、今回、賛成に回った。(皮肉なことに、北朝鮮は「核兵器禁止条約」賛成の立場に回っている。米国の核がなければ自分たちも核を持つ必要がないというアピールであろう。)

日本は、長年、「核兵器全廃条約」を出し続けてきたが、その間に核兵器保有国は減るどころか少しずつ増えていった。どの国も(核兵器で)自国を守る権利があるというのなら、世界中が核兵器を保有することになったらどうなるというのか? 既に核兵器を保有している「核保有クラブ」国はよいが、それ以外の国はよくないというのか?

日本政府は、核兵器禁止条約は核保有国と非保有国の対立を助長するので反対に回ったと説明(注:父親が広島出身で、本人も本籍が広島にある岸田外務大臣が説明)しているが、これは単に、米国の要請を断ることができなかっただけのこと。

terrorist_nuclear-weapon 「核兵器禁止条約」と「核兵器全廃条約」のいずれが現実的な政策で、いずれが非現実的な政策だと言うのか!?

これだけ核保有国があれば、いずれテロリストが核を強奪し、テロに核が将来使用される恐れもある。広島型の1/4くらいの規模の核であれば、現在の技術では、バズーカ砲で発射することも可能だと言われているが・・・? 原発同様、そういう事態が起きない限り、「想定外」ですますつもり?

(政治の)世界では抜け目のない臆病者だけが生き残れる?

feeding_politician フランス革命期の,恐怖政治が終った時,政治家で生き残ったのは,斬首されないようにすばやく意見を変えた,抜け目のない臆病者だけだった。その結果,政治家の中に将軍たちの秩序を保つ勇気のある人物はまったくいなくなり,軍部の栄光が二十年間続くこととなっ た。
フランス革命(期)は例外的な一時期であった。しかし,組織が存在するところではどこでも,勇気よりも’臆病であることの方が(のし上がっていくためには)より有利であることが見いだされるだろう。会社(企業),学校,精神病院等の長になる人たちの十中八九は,独自の判断力を持ち率直に自分の考えを言う人間よりも,従順な胡麻すりを好むだろう。政治の世界では,党の綱領を信奉すると公言し,指導者たちにお世辞を言う必要がある。

During the French Revolution, when the Reign of Terror came to an end, it was found that no one was left alive among the politicians except prudent cowards who had changed their opinions quickly enough to keep their heads on their shoulders. The result was twenty years of military glory, because there was no one left among the politicians with sufficient courage to keep the generals in order. The French Revolution was an exceptional time, but wherever organisation exists cowardice will be found more advantageous than courage. Of the men at the head of businesses, schools, lunatic asylums, and the like, nine out of ten will prefer the supple lickspittle to the outspoken man of independent judgement. In politics it is necessary to profess the party programme and flatter the leaders;
出典: The advantages of cowardice (written in Nov. 2, 1931 and pub. in Mortals and Others, v.1, 1975.]
詳細情報:https://russell-j.com/COWARD.HTM

[寸言]
tpp-hantai_jiminto 安倍政権下の追従者の皆さんは,フランス市民革命期の恐怖政治を生き残った臆病者にそっくりなようです。TPPであろうが,何であろうが、ご主人様が意見を変えたら、「私はブレない!」と勇ましくいっていた人たちも、躊躇なく意見を変え従順な胡麻すり間に変貌(いやもともとそうだったのでしょうが)してどこ吹く風です。

「殺人特権(殺しのライセンス)」を持っているのは007やゴルゴだけではない!

licence_to_kill 超大国(強国)は,今のところ,その気になればいつでも,他の(弱小の)国々の成員を殺す特権を持っている。この自由(人を殺す特権)は,正義と公正を守るために死ぬ英雄的特権として偽装させられている。愛国者は,国(祖国)のために死ぬとは言うが,国(祖国)のために外国人を殺すとは言わない。

Great States have, at present the privilege of killing members of other States whenever they feel so disposed, though this liberty is disguised as the heroic privilege of dying in defence of what is right and just. Patriots always talk of dying for their country and never of killing for their country.
出典: Has Man a Future?, G. Allen & Unwin, 1962, p.84]
guernica_picasso

[寸言]
abe_sanakunin 「愛国者は,国(祖国)のために死ぬとは言うが,国(祖国)のために外国人を殺すとは言わない。」はよく引用される一文。

権力者は腐敗する。絶対的権力者は絶対的に腐敗する」(アクトン卿)もよく引用されるが、権力者は一個人とか一グループに限らない。アメリカ、ソビエト、中国などの超大国は、自分たちに敵対する者はテロリストだとか、悪の枢軸だとか、国家機密漏洩者だとか言って駆逐しようとするが、それらの敵対者を殺害したりする時に、多くの一般市民を殺害しても、もみ消したり、知らんふりしたりする。フリー・ジャーナリストの言うことなんか信用できないと宣伝し、従軍カメラマンなどだけ取材を許し、自分たちの側からの情報だけを一般に見せようとする

信心深いが不道徳な人間-搾取によって蓄財しそのほんの一部を寄付する者

tokken-kaikyu しかし,残酷と搾取によって財産を獲得した人は,たとえ規則的に教会に行き,不正に獲得した収入の一部を公共的な目的(対象)に寄付したとしても,不道徳な人間と見なされなくてはならない。

But a man who acquires a fortune by cruelty and exploitation should be regarded as at present we regard what is called an ‘immoral’ man; and he should be so regarded even if he goes to church regularly and gives a portion of his ill-gotten gains to public objects.
出典: The Harm That Good Men Do,1926]
詳細情報:https://russell-j.com/0393HGMD.HTM

[寸言]
社会的不正によって蓄財した者がそのお金を一部を公共的な目的に寄付すると,それが社会的な不正のカモフラージュであっても、御用ジャーナリズムやマスコミは、大きくとりあげる。
億万長者(ミリオンネアー)が公共的な財団を創ることが流行っているが、税金対策という側面も持っている場合が少なくないようである。