ラッセル『私の哲学の発展』第5章 「一元論にそむいて多元論へ」 n.6

煩瑣な議論がこのあと5,6回続きますが、飛ばしていただいてけっこうです。内面的関係の理論は間違いであり、外面的関係の理論の方が正しいというラッセルの考えがわかればOKです。)

 内面的関係の公理(内面的関係説)に賛成する理由(根拠)が何であるかを自問する時、我々はその公理(の正しさ)を信ずる人々(の言うところ)によって、疑いを抱かされる(are left in question)。たとえばヨアキム氏(Harold Joachim, 1868-1938,ヨアヒムと表記している人もいる)は、終始この公理を前提としていて、しかも、それに賛成する議論(argument 論拠)をまったく提示しない。しかし, 我々が発見できる限りにおいて言えば、その理由(根拠)は二つあると思われる。ただし,これら二つの理由(根拠)は、恐らく、実際には(really)、区別できないものであろう。(即ち)第一に、充足理由律(the law of sufficient reason)があり、それによれば、いかなるものも単なる生の事実(注:just a brute fact:哲学の分野で使われる言葉で、それ以上基礎的な何かによっては説明されないような事実のこと)であるということはなく、そうであってそうでないことはないという(と言える)何らかの理由を有していなければならない。〔ブラッドリー『現象と実在』第二版 p.575に言う、「もし諸項(関係項)が、それ自身の内的本性(性質)からその関係に入っていくのでなければ、その場合は、それらの諸項(関係項)に関する限り、全く理由なしに関係づけられていると思われ、それらの諸項(関係項)に関する限り、関係は恣意的に作られていると思われる。」p.577も参照のこと〕 第二は、もし二つの項がある一定の関係を持つならば、それらの諸項(関係項)はその関係を持たざるをえないのであって、もしそれらがその関係を持たないとすれば、それら二つの項は、異なったものであるであろう、ということである。このことは、諸項(関係項)そのものの中に何かがあって、それが諸項(関係項)をして現在そうであるように関係づけられるように導くということを示しているように見える。
Chapter 5: Revolt into Pluralism, n.6 If we ask ourselves what are the grounds in favour of the axiom of internal relations, we are left in doubt by those who believe in it. Mr Joachim, for example, assumes it throughout, and advances no argument in its favour. So far as one can discover the grounds, they seem to be two, though these are perhaps really indistinguishable. There is first the law of sufficient reason, according to which nothing can be just a brute fact, but must have some reason for being thus and not otherwise. [Cf. Appearance and Reality, 2nd ed., p. 575: ‘If the terms from their own inner nature do not enter into the relation, then, so far as they are concerned, they seem related for no reason at all, and, so far as they are concerned, the relation seems arbitrarily made,’ cf. also p. 577.] Secondly, there is the fact that, if two terms have a certain relation, they cannot but have it, and if they did not have it they would be different; which seems to show that there is something in the terms themselves which leads to their being related as they are.
 Source: My Philosophical Development, chap. 5:1959.  
 More info.:https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_05-060.HTM

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