多数意見に同調できない子供(人間)は生き辛い


感受性の強い少年の場合,ほかの少年たちとばかり付きあわせたままにしておくことには,一定の危険がある。12歳前後の少年は,通例,かなり野蛮で無神経な(感受性の乏しい)段階にある。
 ごく最近,ある一流のパブリック・スクール(注:英国の支配階級の子弟が多数在学)において,ある少年が労働党に共感しているということで,(他の少年から)ひどい身体的な暴行を加えられたという事件(case)があった(注:いわゆる「いじめ」の問題)。平均的な少年たちと異なる意見や趣味を持っている少年は,(他の少年との違いによって)ひどく苦しむことになりがちである。現存の最も近代的で進歩的な寄宿制(全寮制)の学校においてすら,ボーア戦争の間,ボーア人びいき(の少年たち)(pro-Boers)はつらい目にあった。読書好きな少年や,勉強嫌いでない少年は,必ずといっていいほどいじめられる。
フランスでは,最も頭のよい少年たちは,高等師範学校へ行き,もはや平均的な少年とは交わらなくなる。このようなやりかたには,確かに,いろいろな長所がある。
(第一に)わが国でよく見られるように,知力の高い子供が神経を衰弱させたり,平均的な俗物たち(Philistine)におべっかを言ったりしなくても済むようになる。
(第二に),人気のない少年が味わずにはいられない緊張と不幸を避ける事を回避できる。
(第三に),頭のよい少年たちに,彼らに適した教育,つまり,それほどできない少年たちの場合よりもずっと速いペースで進められる教育を授けることができる。
一方,そういう制度では,知能の高い子供は,後年,社会の他の人びとから孤立してしまい,もしかすると,平均的な人たちを理解しにくくなるおそれがある。こういう短所をはらんでいるにもかかわらず,全体的に見れば,この制度は,特別すぐれた頭脳と特別すぐれた道徳的資質に恵まれた少年たちが,たまたま競技(games)にも秀でている場合は別として,例外なくいじめられるイギリスの上流階級の慣行よりも優れている,と私は考えている。

In the case of sensitive boys, there is a certain risk in leaving them to the exclusive society of other boys. Boys of about twelve are, for the most part, at a rather barbarous and insensitive stage. Quite recently, at a leading public school, there was a case of a boy suffering grave bodily injury for being sympathetic to the Labour Party. Boys who differ from the average in their opinions and tastes are likely to suffer seriously. Even at the most modern and progressive boarding schools in existence, pro-Boers had a bad time during the Boer war. Any boy who is fond of reading, or does not dislike his work, is pretty sure to be illtreated. In France, the cleverest boys go to the Ecole Normale Superieure, and do not mix any longer with the average. This plan certainly has advantages. It prevents the intellectuals from having their nerve broken and becoming sycophants of the average Philistine, as happens to many of them in this country. It avoids the strain and misery which an unpopular boy must suffer. It makes it possible to give to clever boys the kind of teaching which suits them, which goes at a much more rapid pace than is possible for the less intelligent. On the other hand, it isolates the intellectuals from the rest of the community in later life, and makes them, perhaps, less able to understand the average man. In spite of this possible disadvantage, I think it on the whole better than the British upper-class practice of torturing all boys who have exceptional brains or exceptional moral qualities, unless they happen also to be good at games.
offset great advantages.
出典:On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 3: Intellectual education, chap.17: Day schools and boarding schools.
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/OE17-040.HTM

<寸言>
自分の意見や考えの多くが社会の多数意見と同じ場合は「快適に」世の中を渡っていける。一方そうでない場合はいじめられることが多く、「生き辛く」なる。従って,多くの人は、それを察知し、本能的に多数意見と同じ意見を抱きがちになる。

権力者にとってもそのような状態は「生き辛い」はずであるが、権力者の考えに同調する(権力者の意向を忖度し、権力者の気に入られそうな発言をする)者が多くでてくるので、権力者は「生き辛い」などということはなく、知らず知らずのうちに弱者を無視しても気づかず、「痛みをあまり感じない」人間が少なくない。

世の中はそうなっているので、たとえば、自民党の支持者が多ければ、自然と、自民党の支持者となる人が少なくない(積極的支持ではなく、気にいる政党がないので消去法による支持だと言っている人が多いが・・・。)。

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