若者の精神を形成する影響力のある大部分のもの(人やメディア)によって,金銭面での成功の理想像が若者の前に示される。映画では,若者たちは贅沢を表現したものを見る。金持ちは大理石の大広間を持っており,大広間には華麗な衣装をまとった美女が集まっている。映画の主人公は,たいてい,最後には成功した階級の仲間入りを成就する。芸術家でさえ,稼いだ金額で判断されるようになる。金銭で計れない価値は,見下されるようになる。あらゆる感受性は,競争におけるハンディキャップであるため,失敗の烙印(焼印)と見なされる。
The ideal of financial success is set before the young by most of the influences that form their minds. In the cinema they see representations of luxury, where plutocrats own marble halls and beautiful ladies in splendid dresses. The hero generally succeeds, in the end, in belonging to this successful class. Even artists come to be judged by the amount of money they make. Merit not measured in money comes to be despised. Every kind of sensitiveness, being a handicap in the struggle, is regarded as a stigma of failure.
出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ集』の中の「希望と恐怖」
詳細情報:http://russell-j.com/HOPEFEAR.HTM
<寸言>
知性や感性よりも「意志の力」が重視され,あらゆるものが,金銭の尺度ではかられる現代世界・・・。
最近の日本の若い人は無駄使いしない人が増えているとのことで,その点は高度成長期の少し傲慢な大人よりはまともだと思われる。ただし,政治においては保守党や保守主義を支持する若者が多いようであり,ジャーナリズムやマスコミの権力に対する弱腰(批判精神の欠如)に危機感を覚えていないのは残念というか,なげかわしい。