人間性についての見方の修正 - 人間性に潜む残酷さ


JOLLY2 戦争がもたらす惨禍の予想で,私は,恐怖でいっぱいになった。しかし,私をより恐怖で満たしたのは,戦争による大虐殺の予想は,英国民のほぼ90パーセントにとって,快いものであるという事実であった。(*注参照)
私は,人間性についての見方を修正しなければならなかった。当時,私は,精神分析については全く無知であったが,,人間の’情念’(様々な感情)について,精神分析家の考えに似通った見方に,独力で到達した。私は,第一次大戦に対する大衆(一般の人々)の感情を理解しようと努力しているうちに,このような見解に到達したのである。それまで私は,親が自分の子供を愛するのは,まったくありふれたことであると思っていたが,第一次大戦により,これはごくまれな例外であると思うようになった。大部分の人は,他の何よりもお金を好むと思っていたが,お金よりも破壊の方をより好むということがわかった。★知識人というものはしばしば真理を愛するものと想像していたが,人気よりも真理の方を選ぶものはその一割にも満たないことがわかった。
(イラスト出典:Bertrand Russell’s The Good Citizen’s Alphabet, 1953)

The prospect filled me with horror, but what filled me with even more horror was the fact that the anticipation of carnage was delightful to something like ninety per cent of the population. I had to revise my views on human nature. At that time I was wholly ignorant of psycho-analysis, but I arrived for myself at a view of human passions not unlike that of the psycho-analysts. I arrived at this view in an endeavour to understand popular feeling about the War. I had supposed until that time that it was quite common for parents to love their children, but the War persuaded me that it is a rare exception. I had supposed that most people liked money better than almost anything else, but I discovered that they liked destruction even better. I had supposed that intellectuals frequently loved truth, but I found here again that not ten per cent of them prefer truth to popularity.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2 chap. 1:The First War, 1968]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB21-040.HTM

[寸言}
(*注)世界大戦になれば,大量殺戮が起こることは,理屈では理解していながら,’非道な’敵国の侵略を防ぐためにはちゅうちょしてはならないと,いずれの国々の人々も,無意識下に’雑念’を追い払おうとする。戦争が終わり,戦争の実体があきらかになると,このように大変なことになるとは予想していなかったと,戦後初めて気づいたかのごとく,自己欺瞞に陥る,というのがラッセルの言いたいことであろう。/ベトナム戦争も,イラク戦争も・・・。)

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