ラッセルについてのデマ・根も葉もない噂 - 無視ばかりしていられない

BR-19661113TRIBUNAL その他にも,私が最近知った二つの噂もひろまりつつあり,それについても腹立だたしく思っている。その2つの噂というのは,私宛の手紙や文書が,私を煩わすことのないようにという配慮で,秘書たちが私に渡さずに保留しているという噂と,私に会いたいと思う人々を私の秘書や同志たちが私に会わさないようにしているという噂である。しかし,私の自宅宛の手紙は私自身が全て開封し読んでいる。けれども私宛の郵便はあまりにも多いので,私自身がその全部に返事を書くというわけにはいかない。とはいっても(=ただし),私は書いてやりたいことを秘書に指示したり,秘書が書いた返事の草稿を発信する前に読んで確認している。また,いろいろな理由で私に会いたいと希望する人々の数が多いため,それら全ての人に会うことは不可能である。たとえば,ヴェトナム戦争犯罪国際法廷の準備会議(右上及び右下写真:ラッセル法廷準備委員会において記者発表するバートランド・ラッセル)を開くために,1966年の終わりにかけてロンドンに滞在した一週間の間,毎日,朝,昼,晩,というように私と話し合いたいと希望する人々の来訪を受けた。しかし,百人をかなり越える人々がこの一週間に私と会って語り合いたいと申し込んで来たが,百人以上の多くの人たちの面会を断わらなければならなかった。
私は長々と私に対する批判に言及してきたが,それは,私が愚かな人間であると考えられるのが嫌であるばかりでなく,そういった理由で,私の議論や声明が嘲られたり,読まれなかったり,耳をかされなかったりすることに,腹が立つからである。それにまた私は,同志たちが,私が依頼したことをやったために批判を受けることが嫌だからである。

BR-19661113TRIBUNAL2Two other rumours which I have learned recently are being put about, I also find vexatious. They are that letters and documents sent to me are withheld by my secretaries lest they trouble me, and that my secretaries and colleagues prevent people who wish to see me from doing so. But I myself open and read all that is addressed to me at home. My mail, however, is so large that I cannot reply to everything, though I indicate to my secretary what I wish said and read the replies drafted by my secretary before they are sent. Again, it is the number of people who wish to see me about this or that which makes it impossible to see them all. During a week, for instance, that I spent in London towards the end of 1966 in order to open the preparatory meetings of the War Crimes Tribunal. I received visits each day, morning, afternoon and evening, from people wishing to talk with me. But, as well over one hundred people asked to talk with me during this week, many, over a hundred, had to be refused.
I have remarked upon these charges at such length not only because I dislike being thought to be silly, but because it exasperates me to have my arguments and statements flouted, unread or unlistened to, on such grounds. I also dislike my colleagues coming under fire for doing, most generously, what I have asked them to do.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3:1944-1969 ,chap4:The Foundation,(1969)
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB34-180.HTM

[寸言]
ラッセルの影響力を何とかして削ごうとする保守反動勢力

有名人に手紙を出しても返事がないと,「お高くとまっている」とか,「なぜ無視するのか」とか言って怒る人がいる。毎日が超多忙な人間にとって、受け取る手紙を全てまじめに読むことは難しく、ましてや全てに返事を書くことは不可能である,という場合も少なく無い。
ラッセルは,ある人から手紙で聞かれた(晩年の)自分の生活ぶりについて,次のように答えている(返事している)。(『拝啓バートランド・ラッセル-一般市民との往復書簡』から引用)

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<送られてきた手紙からの抜粋>  ★写真(ラッセルの書斎)
・・・。私は、ブダペスト科学大学の哲学部の英語講師をしています。・・・。失礼ながら、閣下(lordship)が起床されてから夜までの間にどのように時間をお過ごしになっておられるか、おたずねしたいと存じます。・・・。’

<ラッセルの1963年3月26付の返事>
拝啓 Laczer 博士
・・・。(省略)・・・。

【ラッセル(1872.5.18生まれ)がもうじき91歳になろうとしていた時】
PLAS08-2W日 課 (右写真:北ウェールズの自宅2階の書斎
・午前8時から11時30分まで、新聞を読んだり手紙を処理したりします。★私は1日平均、約100通の手紙をもらいます。
・午前11時30分から午後1時までの間に人と面会します。
(注:遠方からの来客が多いので、多分昼食をともにしていると想像されます。)
・午後2時から4時までの間に読書をします。主として現在の核問題について書かれたものを読みます。
・午後4時から7時までは、執筆したり、面会したりします。
・午後8時から午前1時まで、読書したり、執筆したりします。

以上が私の日課です。これであなたのご質問に対するご返事になればと思います。
敬 具 バートランド・ラッセル

… From 8 to 11.30 a.m., I deal with my letters and with the newspapers. I receive on an average one hundred letters a day. From 11.30 to 1 p.m., I am seeing people. From 2 to 4 p.m., I read, primarily current nuclear writings. From 4 to 7 p.m., I am writing or seeing people. From 8 to 1 a.m., I am reading and writing. That is my daily routine and I hope it answers your questions.
With good wished,
出典: Dear Bertrand Russell; a selection of his correspondence with the general public, 1950 – 1968. Allen & Unwin, 1969.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/DBR5-12.HTM