同情心(思いやり)は純粋な動機であること,また,時には他人の苦痛によっていくらか居心地が悪くなる人もいること,を疑問に付すことができるとは,私は考えません。過去数百年における多くの人道主義的な進歩を生んだのは同情心(思いやり)です。(人道主義的な進歩として)精神異常者が虐待されている(不適切な取り扱いを受けている)という話を聞くとき,われわれはショックを覚えますが,今日では彼らが虐待されていないかなりの精神病院があります。西欧諸国の囚人たちは拷問にはかけられないはずになっていますが,拷問が行なわれている場合には,その事実が発見されると大騒ぎになります。我々は『オリヴァー・トゥイスト』のなかで取り扱われたように孤児が取り扱われることを是認しません。新教(プロテスタント)の国々では,動物に対する残酷さ(動物虐待)を是認しません。これらすべての点で,同情心(思いやり)は政治的に効果的をあげてきました。もし戦争(勃発)の恐怖が取り除かれるのなら,同情心(思いやり)の効用はより大きなものになるでしょう。おそらく,人類の将来の最高の希望は,同情心(思いやり)の範囲と強さが増大させるいろいろな方法が見出されることでしょう。
I do not think it can be questioned that sympathy is a genuine motive, and that some people at some times are made somewhat uncomfortable by the sufferings of some other people. It is sympathy that has produced the many humanitarian advances of the last hundred years. We are shocked when we hear stories of the ill-treatment of lunatics, and there are now quite a number of asylums in which they are not ill-treated. Prisoners in Western countries are not supposed to be tortured, and when they are, there is an outcry if the facts are discovered. We do not approve of treating orphans as they are treated in Oliver Twist. Protestant countries disapprove of cruelty to animals. In all these ways sympathy has been politically effective. If the fear of war were removed, its effectiveness would become much greater. Perhaps the best hope for the future of mankind is that ways will be found of increasing the scope and intensity of sympathy.
出典:Bertrand Russell: What Desires Are Politically Important? 1950
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0944WDPI-150.HTM
<寸言>
同情心(おもいやり)は年齢,地位に関係なく,特定の個人や集団に対して持つことができます。これに対して「忖度(そんたく)」というのは、通常、自分より地位や権力や年齢が上の者に対して働きます。だから某政治家の言うように「忖度はもともと良い意味だった。忖度してなぜ悪いかわからない」という開き直りはいただけません。