ラッセル家の家訓? - 小説家とは結婚するな!(半分 joke)

FRANK-R ミス・モリス(注):モリーの場合と同様,彼女の時代も終わりがやってきて,兄(右写真)エリザベスとの恋愛に陥った。彼(兄)が離婚を望んだモリーは,離婚の代償(慰謝料)として,彼に生涯年額400ポンド支払うこと要求した。兄の死後は私がそれを代わりに支払わなければならなかった。彼女は90歳頃に亡くなった。
エリザベス(Elizabeth von Amin, 1866-1941)は,彼女の方から兄のもとを去り,『ヴェラ』という題の,実に我慢ならないほど残酷な小説を書いた。この小説では,ヴェラは彼の妻であったが既に亡くなっている。彼女を失って彼は悲嘆にくれているということになっている。彼女は,テレグラフ・ハウス(注:ラッセルの兄が所有していた屋敷/下の写真)塔の窓から落ちて死亡した。小説を読み進めると,読者はしだいに,彼女の死は事故死ではなく,兄の冷酷さのためにひき起こされた自殺であるように推理させられるようになる。こういうことがあったので私は子供たちに,特に力をこめてこう忠告をせざるを得なかった。即ち,「小説家とは結婚するな!」

TELEGRAPHer day, like Miss Morris’s, came to an end, and he fell in love with Elizabeth. Molly, from whom he wished to be divorced, demanded £400 a year for life as her price; after his death, I had to pay this. She died at about the age of ninety.
Elizabeth, in her turn, left him and wrote an intolerably cruel novel about him, called Vera. In this novel, Vera is already dead; she had been his wife, and he is supposed to be heart-broken at the loss of her. She died by falling out of one of the windows of the tower of Telegraph House. As the novel proceeds, the reader gradually gathers that her death was not an accident, but suicide brought on by my brother’s cruelty. It was this that caused me to give my children an emphatic piece of advice: “Do not marry a novelist.”
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2 chap. 4: Second Marriage, 1968]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB24-060.HTM

[寸言]
ラッセルの兄フランク(第2代ラッセル伯爵)はハンサムで,女性にもてた。「女癖が悪い」というほどのことはなかったかも知れないが、世間の常識にはとらわれず、離婚・再婚を繰り返した。世間的にまともな結婚がなかったこともあってか、兄には子供がいなかったので、1931年に兄がなくなると、ラッセル(59歳)は爵位(第3代ラッセル伯)を嗣ぐとともに、借金も引き継いだ。兄が所有していたテレグラフ・ハウスは借金の抵当に入っており、借金を返すために間もなく売却している。
作家(小説家)は小説の種にするために、常に周囲の人間を観察をしており、いつ材料として使われるかも知れない。世界的な作家によって描かれ、小説の中に永遠の生命を与えられればよいかも知れないが、九分九厘そういうことはない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です