知的戯言の概要(1943) n.47

 人類が陥りやすい種々の愚かな見解を避けるためには、超人間的な才能は必要ではない。2,3の単純な規則で(規則を守るだけで)、あなたは全ての誤りをさけることはできないが、愚かな誤りから逃れることができるであろう。

 もし問題が観察によって決着できるものであるならば、自分自身で観察をしなさい。 アリストテレスは、女性は男性よりの歯の数が少ないと考える過ちを、アリストテレス夫人に、彼が彼女の歯の数を数えている間,口を開けていてくれるよう頼むという単純な工夫によって、さけることができたであろう。(しかし)彼はそうしなかった。自分は(既に)知っていると考えていたからである。実際知っていないのに知っていると考えることは致命的な誤りであり、我々は皆、この誤りをしがちである。私は自分では、 ハリネズミ(hedgehogs)は黒いカブトムシを食べると信じているが、それはハリネズミはカブトムシを食べると人から(これまでずっと)聞いてきたからである。しか、しもし私がハリネズミの習性について一冊の本を執筆していたとしたら、このあまりおいしそうに思えない食事をしているハリネズミを見るまでは、私は立場を明らかにする(commit myself)べきではない。けれども、アリストテレス は、少し注意が不足していた。古代及び中世の著者達は、一角獣(ユニコーン)と火蛇(サラマンダー)についてあらゆることを知っていた(=知っているとされていた)。それらについて一度も見たことがないからという理由で、独断的な陳述をさけることが必要だと考える者は、彼らの内に誰もいなかった。

Outline of Intellectual Rubbish (1943), n.47
To avoid the various foolish opinions to which mankind are prone, no superhuman genius is required. A few simple rules will keep you, not from all error, but from silly error. If the matter is one that can be settled by observation, make the observation yourself. Aristotle could have avoided the mistake of thinking that women have fewer teeth than men, by the simple device of asking Mrs. Aristotle to keep her mouth open while he counted. He did not do so because he thought he knew. Thinking that you know when in fact you don’t is a fatal mistake, to which we are all prone. I believe myself that hedgehogs eat black beetles, because I have been told that they do; but if I were writing a book on the habits of hedgehogs, I should not commit myself until I had seen one enjoying this unappetizing diet. Aristotle, however, was less cautious. Ancient and medieval authors knew all about unicorns and salamanders; not one of them thought it necessary to avoid dogmatic statements about them because he had never seen one of them. Source: Outline of Intellectual Rubbish (1943) Reprinted in: Unpopular Essays, 1950 More info.: https://russell-j.com/cool/UE_07-470.HTM

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