ラッセル『宗教と科学』第8章 宇宙の目的 n.18


 アレキサンダー教授の見解とベルグソンの「創造的進化」との間には,密接な類似性がある(よく似ている)。ベルグソン(Henri-Louis Bergson, 1859-1941:フランスの哲学者。アインシュタインが相対性理論を発表すると,反対の意図で「持続と同時性」という論文を発表)はこう考える(hold that ~と考える)。(即ち)決定論は間違っている,なぜなら,進化の過程において,事前に予言することも,想像することさえもできなかったような全く新しいものが出現するからである。あらゆるものを進化へと駆り立てる神秘的な力が存在している。例えば,見ることができない動物は(も)ある種の神秘的な視力の前兆となるもの( foreboding of sight)を持っており,眼の発達へ導くようなやり方で行動し始める(proceeds to act)。いかなる瞬間においても(常に)何か新しいものが出現するが,過去は決して死滅せずに,記憶の内に保存される。というのは,忘却はただ外見的なものに過ぎないからである。このようにして,世界は常に内容(=世界に存在するもの)においてより豊かになり,いずれとても素晴らしい場所になるだろう。不可欠であることの一つは,過去を振り返ったり(回顧的であったり)静的であったりする知性を避けることである。我々が使わなければならないのは直観(intuition)であり,直観(注:「直感」にあらず)はそれ自身の中に創造的な目新しいものへと駆り立てるものを含んでいる(のである)。  ラマルク(Jean-Baptiste Lamarck, 1744- 1829:19世紀フランスの著名な博物学者で進化論の先駆者であるが,獲得形質の遺伝という,後に誤っていることがわかった説を提唱) を連想させる(reminiscent of ~思わせる),時折起こる断片的な悪しき生物学を超えて(beyond ~の域を超えて),上述のようなことを信ずるための理由が与えられると考えてはならない。ベルグソンは詩人とみなすべきである。彼は,自分自身の原則にもとづき,単なる知性だけに訴えるようなものを全て避けている(のである)。  私はアレキサンダー教授がベルグソンの哲学を全面的に受け容れていると示唆しているのではない。しかし,彼らはその見解を別々に展開させたが,彼らの見解には類似性がある(似ている)。いずれにせよ,彼らの理論は,時間を強調することと,進化の過程において予測できない新規性(新しいもの)が出現すると信じていることにおいて,一致している。

Chapter 8:Cosmic Purpose , n.18
There is a close affinity between Professor Alexander’s views and those of Bergson’s “Creative Evolution.” Bergson holds that determinism is mistaken because, in the course of evolution, genuine novelties emerge, which could not have been predicted in advance, or even imagined. There is a mysterious force which urges everything to evolve. For example, an animal which cannot see has some mystic foreboding of sight, and proceeds to act in a way that leads to the development of eyes. At each moment something new emerges, but the past never dies, being preserved in memory – for forgetting is only apparent. Thus the world is continually growing richer in content, and will in time become quite a nice sort of place. The one essential is to avoid the intellect, which looks backward and is static ; what we must use is intuition, which contains within itself the urge to creative novelty. It must not be supposed that reasons are given for believing all this, beyond occasional bits of bad biology, reminiscent of Lamarck. Bergson is to be regarded as a poet, and on his own principles avoids everything that might appeal to the mere intellect. I do not suggest that Professor Alexander accepts Bergson’s philosophy in its entirety, but there is a similarity in their views, though they have developed them independently. In any case, their theories agree in emphasizing time, and in the belief that, in the course of evolution, unpredictable novelties emerge.
 出典:Religion and Science, 1935, chapt. 8: Cosmic Purpose  
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_08-180.HTM

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