これら全てのこと(注:原罪やノアの洪水など)は,実際に聖書の中で語られていることであるにしろ,そこ(聖書の記述)から演繹できることであるにしろ,実際に,歴史的な事実問題(事実である事柄)として(当時の人々によって)考えられた,ということを理解しなければならない。世界創造の日は,(聖書の)創世紀の中の系図から推論することができ,系図は年とった各家長が自分の長子(最初の子供)を生んだ時何歳であったかを告げている。ある程度の曖昧さやギリシア訳旧約聖書(Septuagint)とヘブライ語の聖書原本との間のある程度の相違により,いくらか論争の余地が許された(permissible 論争を行うことが認められた)。しかし,ついにはプロテスタント系キリスト教界はあまねく(generally),紀元前4004年 -その年代は大主教アッシャーによって定められた- を世界創造の年として受け入れた。ケンブリッジ大学副総長ライトフット博士(注:英国では大学の総長は名誉職で皇族などが就任するので,副総長は実質的な学長)は創造のこの日付を受け入れたが,創世紀を注意深く研究することによりもっと精確な結果が得られるだろうと考えた。(即ち)博士に従えば,人間の創造は、(紀元前4004年)10月23日午前9時に行なわれた(そうである)。けれども,これは信仰箇条(an article of faith 証明や証拠を必要としない教義)にされたことはななかった。(即ち)あなたがあげる根拠は聖書にあるということであれば(根拠を聖書の創世記に求めるなら),異端の危険を犯すことなく,アダムとイブは(紀元前4004年)10月16日あるいは10月30日に生れたと信じることも可能であろう。世界創造の週のなかのその日(人間創造の日)は,もちろん,金曜日だったと知られている。なぜなら,神は土曜日に休まれたからである(笑)(英米の小説には 『ロビンソン漂流記』のように, Friday という名前の人物が時々でてくるが、創世記では金曜日に人間が創られたことになっていることから意識的にそのように名付けられているかも知れない)。
Chapter 3: Evolution, n.3
All this, it must be understood, was held to be literal historical matter of fact, either actually related in the Bible, or deducible from what was related. The date of the creation of the world can be inferred from the genealogies in Genesis, which tell how old each patriarch was when his oldest son was born. Some margin of controversy was permissible, owing to certain ambiguities and to differences between the Septuagint and the Hebrew text ; but in the end Protestant Christendom generally accepted the date 4004 B.C., fixed by Archbishop Usher. Dr. Lightfoot. Vice-Chancellor of the University of Cambridge, who accepted this date for the Creation, thought that a careful study of Genesis made even greater precision possible ; the creation of man, according to him, took place at 9 a.m. on October 23. This, however, has never been an article of faith ; you might believe, without risk of heresy, that Adam and Eve came into existence on October 16 or October 30, provided your reasons were derived from Genesis. The day of the week was, of course, known to have been Friday, since God rested on the Saturday.
出典:Religion and Science, 1935, chapt. 3: Evolution.
情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_03-030.HTM