恐怖にかられた国民は,不寛容な国民であり(国民となる)


社会的進歩の根源(続き)

 我々の現在の技術を使って世界的規模の協力を行えば,貧困と戦争をなくすことができるだろうし,また,これまでなかったほど(水準)の幸福と福祉とを全人類にもたらすことができるだろう。しかし,このことは明白であるが,人間はいまだに協力を自分の集団に限定し,他の集団に対しては,日常生活を大惨事の恐ろしい幻想で充たす烈しい敵意に身をやつす方を好んでいる。
全ての人の利益が命じる(要求する)ように行動することができないという,この不合理かつ悲劇的な無能力の理由は,何か外的なものにあるのではなく我々自身の感情の性質(特質)にある
科学者が考えるように我々が洞察が働く瞬間に,非個人的に(客観的に)感じることができれば,我々の意見の不一致(divisions)や争いの愚かさがわかるだろうし,自分たちの利益は他人の利益と両立するが,他人を破滅させたいという欲求とは両立しないことをすぐに認識するであろう。
 我々の時代の最大の悪弊である狂信的な独断論は,前述のように,主に知的な欠陥であるが,哲学が知的な解毒剤を供給するものの一つである。しかし,独断論の非常に多くのものは感情的(情緒的な)な源泉も持っている。即ち,恐れである。もっとも緊密な社会的統一のみが敵に対するために充分なものであり,正統主義からほんのわずかに逸脱するだけでも,戦争において(味方)を弱体化させる効果をもつ,と感じられる恐怖にかられた国民は,不寛容な国民である。私はこの点で,彼らが賢明であるとは考えない。恐怖心はめったに理性的行動を起こさせることはなく,非常にしばしば恐れられているまさにその危険を増すような行動を起こさせるのである。

Roots of Social Progress

World-wide co-operation with our present technique could abolish poverty and war, and could bring to all mankind a level of happiness and well-being such as has never hitherto existed. But although this is obvious men still prefer to confine co-operation to their own groups and to indulge toward other groups a fierce hostility which fills daily life with terrifying visions of disaster. The reasons for this absurd and tragic inability to behave as everybody’s interests would dictate lie not in anything external but in our own emotional nature. If we could feel in our moments of vision as impersonally as a man of science can think, we should see the folly of our divisions and contests, and we should soon perceive that our own interests are compatible with those of others but are not compatible with the desire to bring others to ruin. Fanatical dogmatism, which is one of the great evils of our time, is primarily an intellectual defect and, as I suggested before, it is one to which philosophy supplies an intellectual antidote. But a great deal of dogmatism has also an emotional source: namely, fear. It is felt that only the closest social unity is adequate to meet the enemy and that the slightest deviation from orthodoxy will have a weakening effect in war. Frightened populations are intolerant populations. I do not think they are wise in this. Fear seldom inspires rational action and very often inspires action which increases the very danger that is feared.
出典:A Philosophy of Our Time (1953)
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/1026_PfOT-060.HTM

<寸言>
恐怖心にかられた人(国民)は,まず自分(自国)の恐怖心をふりはらうために、極端に走りやすく、他人(他国)のことはあまり考えずに、残酷になりやすい。危険な要素はできるだけ少なくしたり、危険に備えることは重要であったとしても、そのために人間性や思いやりの心を捨ててはならない。
しかし、現在では、「国民の命を守る」「国難」「悪の枢軸」など,言葉で恐怖心をあおるような行為を、世界の指導者が「愛国=無罪」の考えのもと,◯◯ first! を連呼してやっている。
宗教も恐怖心に根ざしており、多くの人間の悲惨さの原因となっている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。