我々の抱える問題を共有(実感)しない人達がその問題に対して示す楽観主義

SELECT-R 楽観主義はそれが信頼できる間は気持ちがよいが,一旦信頼できなくなればそれは人をひどくいらだだせる,というのが真実である。特に腹ただしいのは,われわれの抱える問題を共有しない人たちがその問題に対して示す楽観主義である。他人の問題(トラブル)をみて楽観的なことを言うことは,その問題の解決あるいは軽減のためのかなり具体的な提案を伴わないかぎり,非常に危険である。医者は,患者の病気に対してそれを治す処方を用意できるならば,楽観的なことを言う資格がある。しかし,「そのうち,良くなるさ」などと言うだけの友人には,われわれは腹をたてる。

The fact is that optimism is pleasant so long as it is credible, but when it is not, it is intensely irritating. Especially irritating is the optimism about our own troubles which is displayed by those who do not have to share them. Optimism about other people’s troubles is a very risky business unless it goes with quite concrete proposals as to how to make the troubles disappear or grow less. A medical man has a right to be optimistic about your illness if he can prescribe a treatment which will cure it, but a friend who merely says. ‘Oh, I expect you will soon feel better.’ is exasperating.
出典:On optimism, Mar. 16, 1931. In: Mortals and Others, v.1 (1975)
詳細情報:http://russell-j.com/OPTIMISM.HTM

[寸言]
安部首相が音頭をとり,財界などが囃し立てる「アベノミクス」。
消費税の値上げは必要だとしても,やる場合は(5%から8%に上げる時に),少なくとも食料品などは現行据え置きかあるいは非課税とすべきでした。それは技術的に難しいからということで見送られましたが,大企業に務めている人間以外の多くの人が,やりくりが厳しくなっており,特に低所得者,生活保護世帯,年金生活者などにしわ寄せがいっています。
現政府や財界人,大企業に務めている人たちの基本的な発想は,強いもの(富める者)がより強くなれば(富めば),いずれ弱いもの(貧しい者)にもそのおこぼれがいく,といったもの(注:トリクルダウン・セオリー)です。「まず富める者から富めよ」というスローガンを掲げた(今は亡き)中国の鄧小平と同じです。

ラッセルが言うように,,「特に腹ただしいのは,いつも後回しにされる人々の抱える問題を共有(また実感)しない人たちが,その問題に対して示す楽観主義」(「そのうち低所得者層にも恩恵が行き渡るさ」など)です。
表面上いくら丁寧に,全国民のことを考えている,と言っても,(たとえば原発は最小限にしてできるだけ自然エナルギーにしていくと言いながらさかんに海外に日本の原発や原発技術を売り込むようなことをしたり,武器輸出を大幅解禁したり,カジノ法案を通そうとしたりしているようでは虚しく響きます。

巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)」
【意味】 言葉巧みで、人から好かれようと愛想を振りまく者には、誠実な人間が少なく、人として最も大事な徳である仁の心が欠けているものだ。

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