第11章 組織体の生物学 n.3


 完全に民主的な政治体制(政府)であってさえ - もしそういうものがありうるとしての話だが - 権力の再配分が(必然的に)伴う。もし仮に,あらゆる人々が合同の決定において平等の発言権を持ち,かつ,(たとえば)百万人の成員がいる場合,あらゆる人は百万人の全体に対して百万分の一の権力を持つ(ことになる)。その代替は(そうでなければ),もし彼が孤独な野獣であれば持っている権力のように,自分自身に対しては完全な権力を持つが他者に対しては誰も権力を持たない(ということになる)(注:論理学者のラッセルらしい物言い。つまり、完全に平等の権利をもっているのなら、100万人の国民のなかの一人は百万分の一の権力しかもたない、つまり自分に対しての権利しかもたないということ)。このような民主的な政体は,無政府主義的な個人集団の心理(状態)とは非常に異なった心理(状態)を生みだす。そして -ある程度までは常にそうであろうが- 政府は完全に民主的ではない場合には,その(民主的でないことの)心理的な効果は増大される。政府の成員は,かりに彼らが民主的に選挙で選ばれている場合でさえも,他の人々に比べて大きな権力をもっている。また,民主的に選ばれた政府によって任命される官公吏(官僚)も同様である(より強い権力を持つことになる)。組織が大きくなればなるほど,行政官の権力はそれだけ大きなものになる。このようにして,組織体の規模が増すごとに権力の不平等は増し,それと同時に,通常の成員の自主性(自立性)は減少し,政府のイニシアティブ(主導権)の範囲が拡大する。平均的な人間が(組織に)服従するのは,単独でするよりもずっと多くのことが協力によって為しとげられるからである。異常に権力を愛する者がこうした組織(体)を喜ぶのは,組織によって彼に好機が与えられるからである。ただし,政府が世襲的なものであってはだめであり,権力を愛する者が重要な地位を占めることが許されない集団(たとえば,若干の国のユダヤ人のように)に属していなければ(という条件付き)である。

Chapter XI: The Biology of Organizations, n.3 Even a completely democratic government –if such a thing were possible– involves a redistribution of power. If every man has an equal voice in joint decisions, and if there are (say) a million members, every man has a millionth part of the power over the whole million, instead of complete power over himself and none over others, as he would have if he were a solitary wild animal. This produces a very different psychology from that of an anarchic collection of individuals. And where — as must always be the case to some extent — the government is not completely democratic, the psychological effect is increased. The members of the government have more power than the others, even if they are democratically elected ; and so do officials appointed by a democratically elected government. The larger the organization, the greater the power of the executive. Thus every increase in the size of organizations increases inequalities of power by simultaneously diminishing the independence of ordinary members and enlarging the scope of the initiative of the government. The average man submits because much more can be achieved cooperatively than singly; the exceptionally power-loving man rejoices, since it provides his opportunity — unless indeed, the government is hereditary, or the power-loving individual belongs to a group (such as Jews in some countries) which is not allowed to occupy positions of importance.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER11_030.HTM

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