ラッセル『権力-その歴史と心理』第8章 経済的な権力 n.23


 単一国家内の経済関係において,法律は,他者(他人)から富を引き出す方法において何が可能か(許されるか)ということに対して,制限(限界)をもうける(置く)。一個人あるいは一集団は,他人が欲しがるものについて,完全なあるいは部分的な独占権を保有していなければならない(注:そうでなければ売買などはできない)。独占権法によって生み出すことができる。たとえば,特許や著作権や土地の所有権である。独占権は,また,企業合同(trust unions)や職種別労働組合(trade unions)の場合のように,結合(合同)によっても生みだすことができる。私的個人あるいは団体(集団)が(売買の)交渉によって引き出せるものは別として,国家は,自らが欲しいと思うものは何でも,力づくで手に入れる権利を保持している(注:国による没収など)。しかも,影響力のある民間団体は,全体としての国民にとっては必ずしも有利ではないがそれらの民間団体にとっては有利なやりかたで戦争をする権力を国家に行使させることもできるのと同様に,力づくによる収奪の権利を行使するように国家を誘導することもできる(注:米国や英国の石油メジャーが中東の油田を支配下に置いた歴史的経緯を想起すればよいだろうか?)。(たとえば)影響力のある民間団体は,国の法律を,その団体にとっては都合がよいような(性格の)のものにすることもできる。たとえば,雇傭者の団結は許可するが,貸金労働者の団結は許可しないというような法律(の制定)である。このようにして,個人または団体(集団)の保有する経済的権力の実際の程度は,経済学で通常考えられている諸要因に依存するのとまったく同様に,軍事力の強さや宣伝を通しての影響力に依存している一つの独立した科学(学問)としての経済学は非現実的なものであり,これが実践上の指針とし採用されるようなことがあれば,人を誤らせる(ことになる)。経済学は -大変重要な要素であるが- もっと幅広い研究,即ち,権力の科学の一つの要素である

Chapter VIII: Economic Power, n.23

In the internal economic relations of a single State, the law sets limits to what can be done in the way of extracting wealth from others. An individual or a group must possess a complete or partial monopoly of something desired by others. Monopolies can be created by law ; for example, patents, copyrights, and ownership of land. They can also be created by combination, as in the cases of trusts and trade unions. Apart from what private individuals or groups can extract by bargaining, the State retains the right to take by force whatever it considers necessary. And influential private groups can induce the State to use this right, as well as the power of making war, in a manner which is advantageous to themselves though not necessarily to the nation as a whole; they can also cause the law to be such as is convenient to themselves, e.g. by allowing combinations of employers but not of wage-earners. Thus the actual degree of economic power possessed by an individual or group depends upon military strength and influence through propaganda quite as much as upon the factors usually considered in economics. Economics as a separate science is unrealistic, and misleading if taken as a guide in practice. It is one element — a very important element, it is true — in a wider study, the science of power.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER08_230.HTM

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