ラッセル『権力-その歴史と心理』第8章 経済力(経済的な権力) n.2


 しかし,同様の分析は,もっと不明瞭な事例(場合)にもあてはまる。小作人はなぜ農地の地代を払わなければならないのか? 小作人はなぜ収穫物を売ってもよいのか(売ることができるのか)? 小作人が地代を払わなければならないのは,その土地が地主「のもの」(の所有物)だからである。地主がこの土地を所有しているのは,彼が誰か他の人からその土地を購入または相続によって入手したからである。(だが)その地主がこの財産所有権を得るに至った歴史を過去に遡ると,最後には,この土地を力で -王が廷臣の誰かを寵愛して恣意的にふるった権力によって,あるいは,サクソン人やノルマン人による征服のような大規模な征服によって- 獲得した誰かに行き当たる(注:○○家初代など/天皇家初代;徳川家初代など)。そのような暴力行為の合間においては(注:大戦争によって体制が変わるまでは),(時の)国家権力は所有権が法に従うこと(ownership shall pass according to law 所有権が法律に従って通用すること)を保証するように利用されるのである(注:徳川幕府の時代には,諸法度という法に従って所有権は管理された。なお,東宮氏はこの一文を「このような暴力行為のあいまあいまをつなぐために、国家の権力が利用されて,これが★所有権の法による譲渡を保証する★のである」と訳されている。)。また,土地の所有権とは,(要するに)誰にその土地に立ち入ることを許すかを決定する権力である。(即ち)この許可を得るために小作人は地代を払うのであり,この許可のおかげで,彼は収穫物を売ることができるのである

 製造業者の権力も同種のものである。業者の権力は,どこまでも分析していくと,ロックアウト(工場閉鎖),即ち,工場所有者が資格のない者(事前の許可を受けていない者)が彼の工場の中に入ることを禁ずるために国家権力を呼び寄せることができるという事実に依存している。世論の状態によっては,国家がこの点において工場所有者の言いつけ通りに行うことに気が進まないこともあるかもしれない。その結果,(工場内での)坐り込みストライキが可能となる。そうしたストライキが国家によって大目にみられるやいなや,所有権はそれまでのように全て雇用者に帰するのでなく,ある程度,被雇用者と共有されるようになり始める(のである)。

Chapter VIII: Economic Power, n.2

But the same analysis applies in less obvious cases. Why must a tenant farmer pay rent for his farm, and why can he sell his crop? He must pay rent because the land “belongs” to the landowner. The landowner owns the land because he has acquired it by purchase or inheritance from some one else. Pursuing the history of his title backwards, we come ultimately to some man who acquired the land by force — either the arbitrary power of a king exercised in favour of some courtier, or a large-scale conquest such as those of the Saxons and Normans. In the intervals between such acts of violence, the power of the State is used to insure that ownership shall pass according to law. And ownership of land is power to decide who shall be permitted to be on the land. For this permission the farmer pays rent, and in virtue of it he can sell his crop.

The power of the industrialist is of the same sort; it rests, in the last analysis, upon the lock-out, that is to say, upon the fact that the owner of a factory can call upon the forces of the State to prevent unauthorized persons from entering it. In certain states of public opinion, the State may be reluctant to do the bidding of the owner in this respect; the consequence is that stay-in strikes become possible. As soon as they are tolerated by the State, ownership ceases to be vested wholly in the employer, and begins to be shared, in some degree, with the employees.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER08_020.HTM

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