ラッセル『権力-その歴史と心理』第6章 むきだしの権力 n.25

 ルソーの『社会契約論』は,現代の読者にとって(は),非常に革命的な(意味を持つ)ものとは思われない。(従って)この本が諸政府にとってなぜそんなに衝撃的なものであったか(今日)理解することは困難である。(衝撃的であった)主な理由は、『社会契約論』が,政府の権力の基礎を,君主に対する迷信的な尊敬ではなく,理性的な根拠で採用された社会慣習に置こうとしたことである,と私は考えるルソーの学説が世界に及ぼした影響は(影響を見れば),政府(統治)のための何らかの非迷信的な基礎(が必要なこと)を人々に同意させることの困難さを示している(困難さを明らかにしている)。恐らく,このこと(同意させること)は,迷信があまり急激に一掃された場合には,不可能であろう。自発的な協力でいくらかの実践をすることは(が)事前の訓練として必要である。その場合の大きな難点は,法に対する敬意は社会秩序に欠くべからざるものであることである。しかし,もはや同意を要求しない伝統的な政体の下では,法に対する尊敬は不可能であり,革命(下)においては無視されるのは必然的である。しかし,この問題は難しいものではあるが,もし秩序ある社会の存在ということが,知性の自由な行使と両立しうるものであるべきだとするならば,解決されなければならない(問題である)。

Chapter VI: Naked Power, n.25

Rousseau’s “Social Contract,” to a modern reader, does not seem very revolutionary, and it is difficult to see why it was so shocking to governments. The chief reason is, I think, that it sought to base governmental power upon a convention adopted on rational grounds, and not upon superstitious reverence for monarchs. The effect of Rousseau’s doctrines upon the world shows the difficulty of causing men to agree upon some non-superstitious basis for government. Perhaps this is not possible when superstition is swept away very suddenly: some practice in voluntary co-operation is necessary as a preliminary training. The great difficulty is that respect for law is essential to social order, but is impossible under a traditional regime which no longer commands assent, and is necessarily disregarded in a revolution. But although the problem is difficult it must be solved if the existence of orderly communities is to be compatible with the free exercise of intelligence.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER06_250.HTM

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です