ラッセル『権力-その歴史と心理』第4章 聖職者(僧侶)の権力 n.14

 (カトリック)司祭の独身主義は,ヒルデブランド(注:Hildebrand = Ildebrand イルデブランド=教皇グレゴリウス七世)の専心事項(夢中になっている問題)のうちの一つであった。このことを司祭に強いるにあたって,彼は,聖職者とその妻に対し,しばしば著しく残酷な罪を犯している一般信徒(俗人)たちの賛助(支援)を得た。この(司祭独身主義)運動はもちろん完全には成功しなかった。今日に至るまでスペインでは成功しなかった。しかし,この運動の主要目的の一つは,聖職者の子供(息子)は司祭になることができないという布告によって達成され,それは各地の聖職が世襲となることを防いだのである。

 教会改革運動の最も重要な勝利の一つは,1059年の布告によって,教皇の選出方法が確定したことであった。この布告が出される以前,皇帝とローマの民衆はある一定の明確でない(はっきりしない)権利をもっており,それによって,教皇選出選挙が分裂したり,異議が唱えられたりした。即座にも,争いなしにというわけにもいかなかったけれども,新しい布告(教令)は,教皇選挙の選挙権を枢機卿たちに限定することに成功した。

Chapter IV: Priestly Power, n.14

Clerical celibacy was one of Hildebrand’s preoccupations; in enforcing it, he enlisted the laity, who were frequently guilty of gross cruelty towards priests and their wives. The campaign was not, of course, completely successful –to this day it has not succeeded in Spain- -but one of its main objects was achieved by the decree that sons of priests could not be ordained, which prevented the local priesthood from becoming hereditary.

One of the most important triumphs of the reform movement was the fixing of the method of Papal election by the decree of 1059. Before this decree, the Emperor and the Roman populace had certain ill-defined rights, which made schisms and disputed elections frequent. The new decree succeeded –though not immediately and not without a struggle– in confining the right of election to the Cardinals.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER04_140.HTM

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