しかし、全ての母親は(が)誰か他の女性がもっとうまくやれることであっても自分自身でやるべきである、と要求するような社会慣行があってはならない。多くの母親がそうであるように、我が子に対して当惑と無能力を感じる母親は、この仕事への適性があり、必要な訓練を受けている女性に、我が子の世話を委ねることをためらってはならない。我が子に対してなすべき正しいことを女性に教えてくれる天から与えられた本能などない。また、ある一定の限度を越えた’気づかい’は、所有欲のカムフラージュ(偽装)である。多くの子供が、母親の無知で感傷的な扱いによって心理的に駄目にされる。
But there should be no convention demanding that every mother should do herself what some other woman can do better. Mothers who feel baffled and incompetent when faced with their children as many mothers do, should have no hesitation in having their children cared for by women who have an aptitude for this work and have undergone the necessary training. There is no heaven-sent instinct which teaches women the right thing to do by their children, and solicitude when it goes beyond a point is a camouflage for possessiveness. Many a child is psychologically ruined by ignorant and sentimental handling on the part of its mother.
出典:ラッセル『幸福論』第13章「家族」
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/HA24-100.HTM
<寸言>
母性本能はあっても(強くても),幼児の健康増進や知育をどうやったらよいかという知識がないと,母親の無知で感傷的な扱いによって.幼児の健康を損ねたり,幼児を心理的に駄目にしたりする危険性がある。
質の高い保育所に預ければ,費用がかなりかかり,働いて得る給料の多くを保育費にとられるかも知れないが,(核家族において)少なくとも子育ての仕方がわからずにパニックになることはなく、精神的なゆとりがでるという大きなメリットがある。