知的戯言の概要(1943) n.50

 心理的想像力が十分ある人にとっては、自分と異なるバイアス(偏見/先入見)を持つ人との議論を想像することは良い案(plan)である。これは、論敵と実際に会話することと比較して、一つの、また、唯一の利点がある。(つまり)この一つの利点というのは、この方法は相手と時と場所とを同一にしなければならないという制限に服しなくてもよいということである。 マハトマ・ガンジーは鉄道や蒸気船や機械を嘆いている。(即ち)彼は(可能であれば)産業革命全体を御破算にしたい(なかったことにしたい/産業革命以前にもどりたい)のである。あなたはこのような意見を抱く人間にはまったく実際に会う機会を決してないかも知れない。なぜなら、西欧の国々ではたいていの人々は 近代技術を当たり前のここととして活用しているからからである。しかし、もしあなたがこの支配的な意見に同意するのが正しいかどうか確かめたいのであれば、あなたの心にうかんでくる論拠(arguments)を、ガンジーがそれらの論拠に反発していったかもしれない(可能性のある)ことを考慮してみることによって、テストするのが一つの良案であると気づくであろう。私はこの種の想像上の対話の結果として、実際に、自分の考えを変えさせられたことが時々あった。そして、そうでなくとも(short of this)、私は仮想の論敵が持っている可能性がある道理(reasonableness 合理性)を理解することによって、しだいにより独断的でなくなり、また過度な確信を持つことがより少なくなっていく自分を発見した(自分に気づいた)ことがしばしばあった(のである)。

Outline of Intellectual Rubbish (1943), n.50
For those who have enough psychological imagination, it is a good plan to imagine an argument with a person having a different bias. This has one advantage, and only one, as compared with actual conversation with opponents; this one advantage is that the method is not subject to the same limitations of time or space. Mahatma Gandhi deplores railways and steamboats and machinery; he would like to undo the whole of the industrial revolution. You may never have an opportunity of actually meeting any one who holds this opinion, because in Western countries most people take the advantage of modern technique for granted. But if you want to make sure that you are right in agreeing with the prevailing opinion, you will find it a good plan to test the arguments that occur to you by considering what Gandhi might say in refutation of them. I have sometimes been led actually to change my mind as a result of this kind of imaginary dialogue, and, short of this, I have frequently found myself growing less dogmatic and cocksure through realizing the possible reasonableness of a hypothetical opponent.
Source: Outline of Intellectual Rubbish (1943)
Reprinted in: Unpopular Essays, 1950
More info.: https://russell-j.com/cool/UE_07-500.HTM

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