知的戯言の概要(1943) n.27

 もちろん、こういったことはすべてまったくのナンセンスであって、この問題を研究したことのあるあらゆる人にそれはナンセンスな事柄であることが知られている(みんな知っている)。アメリカの学校においては、最大限多様な出自の子供達が同一の教育制度に服しており、知能指数(intelligence quotients )を測定したり、そうでなければ、生徒の先天的能力を評価する仕事をしている人々は、人種(についての)理論家達によって仮定されたような人種差別をすることはできない(のである)。いかなる国あるいは人種集団にも、利口な子供もいれば愚かな子供もいる。アメリカ合衆国では、有色人種の子供達は、白人の子供達のように、順調に成長する可能性は低い。それは、有色人種は社会的に劣等であるという烙印(stigma)が押されているからである。 しかし先天的な能力が環境の影響力から分離されることができるかぎり、異なる集団の間に何ら(先天的能力に)はっきりした違い(distinction 区別/差別)は存在していない。優越人種という概念全体は単なる権力を保持する者の傲慢な自尊心によって生み出された単なる神話である。いつの日か、もっとよい証拠(訳注:「能力の差があることを証明する」、あるいは「差はないことを証明する」「よい証拠」を言っており、「能力の差があることを証明する」証拠だけを言っているのではないことに注意)があらわれてくるかもしれない。もしかすると、やがて教育者達は、ユダヤ人は[ユダヤ以外の〕異教徒達よりも、もっと高い知的な水準にあると証明することができるかも知れない。(訳注:「probably「多分」と違い、「perhaps」は「もしかすると」というニュアンス。理想社から出ている日本語訳では「おそらく、やがて教育者たちは、ユダヤ人は[ユダヤ以外の〕異教徒達たちよりも、もっとたかい知的な水準にあると証明する(言う)ことができるようになるであろう。」となっており、不適切な訳となっている。)しかし、現在のところ、まだそのような証拠はなく、優越人種についてとやかく言われることはすべてナンセンスとしてしりぞけられなければならない。

Outline of Intellectual Rubbish (1943), n.27
All this is, of course, pure nonsense, known to be such by everyone who has studied the subject. In schools in America, children of the most diverse origins are subjected to the same educational system, and those whose business it is to measure intelligence quotients and otherwise estimate the native ability of students are unable to make any such racial distinctions as are postulated by the theorists of race. In every national or racial group there are clever children and stupid children. It is not likely that, in the United States, colored children will develop as successfully as white children, because of the stigma of social inferiority; but in so far as congenital ability can be detached from environmental influence, there is no clear distinction among different groups. The whole conception of superior races is merely a myth generated by the overweening self-esteem of the holders of power. It may be that, some day, better evidence will be forthcoming; perhaps, in time, educators will be able to prove (say) that Jews are on the average more intelligent than gentiles. But as yet no such evidence exists, and all talk of superior races must be dismissed as nonsense. .
 Source: Bertrand Russell : An Outline of Intellectual Rubbish, 1943  Reprinted in: Unpopular Essays, 1950, chapter 7:
 More info.: http://www.ditext.com/russell/rubbish.html       https://russell-j.com/cool/UE_07-270.HTM

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