知的戯言の概要(1943) n.9

 カトリック教会の公認の哲学者の聖トマス・アクィナス(Thomas Aquinas, 1225年頃-1274年:イタリアの神学者・哲学者)はある一つの非常に重大な問題を長々と真面目に論じたが、(I fear 残念ながら)その問題を現代の神学者達は不当に軽視しているのではないかと、私には思われる。アクィナスは、人肉以外何も食べたことがなく、その父母も(before 彼が生まれる前に)同様の傾向を持っていた(=ほとんど人肉しか食べていなかった)、一人の人喰い(a cannibal)を想像している(訳注:赤ん坊の時は母乳ではなく、人肉スープを飲んでいるということになりそうです)。(人肉しか食べたことがないわけなので)彼の肉体のあらゆる微粒子(細胞など)は当然のこと、他人のものに属している(ことになる)。 人喰いによって食べられた人々の微粒子は永遠に(through all eternity)欠けるとは想定できない。しかし、もし(食べられてしまった人々の肉体が復活して)人喰いの肉体の微粒子が欠けるようなことになったら、その人喰いに何が残るだろうか? もし、彼の肉体(の諸部分)が全てそのもとの所有者(食べられた人々)に(肉体の復活によって)戻るならば、どのようにして彼(人喰い)は地獄できちんと焼かれることができるのだろうか? これは聖トマスが正しくも認識したように、人を当惑させる問題である。(訳注:あくまで神学及び哲学上の問題です。)

Outline of Intellectual Rubbish (1943), n9
St. Thomas Aquinas, the official philosopher of the Catholic Church, discussed lengthily and seriously a very grave problem, which, I fear, modern theologians unduly neglect. He imagines a cannibal who has never eaten anything but human flesh, and whose father and mother before him had like propensities. Every particle of his body belongs rightfully to someone else. We cannot suppose that those who have been eaten by cannibals are to go short through all eternity. But, if not, what is left for the cannibal? How is he to be properly roasted in hell, if all his body is restored to its original owners? This is a puzzling question, as the Saint rightly perceives.
 Source: Bertrand Russell : An Outline of Intellectual Rubbish, 1943  Reprinted in: Unpopular Essays, 1950, chapter 7: More info.: http://www.ditext.com/russell/rubbish.html

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