ラッセル『結婚論』第五章 キリスト教倫理 n.13:教父達の女性に対する罵り言葉

第五章 キリスト教倫理 n.13:教父達の女性に対する罵り言葉

教父たちの著作は,女性(というもの)に対するののしり言葉(悪口雑言)で満ちあふれている。(注:Woman と大文字になっている。)

Woman at hell’s door dramatic background

(レッキーによれば,教父たちの著作の中で)女性は,地獄(へ)の門として,(また)人間のあらゆる害悪の母として表現(象徴)された。女性は,自分が女性であるというまさにその考えだけで(=女性であること自体を)恥じるべきである。女性は,自分がこの世にもたらした呪いのゆえに,絶えず悔い改める(懺悔の)生活を送らなければならない。女性は,自分の衣装を恥じるべきである。というのは,衣装こそは,女性の堕落を記憶に留めたものであるからである。女性は,特に自分の美を恥じるべきである。美は悪魔の最も有力な道具(instrument 手段)であるからである。(女性の)肉体美は,実際,絶えず,キリスト教会による非難の主題となった(のである)。ただし,不思議なことに,一つだけ例外とされていたようである。というのは,中世においては,司教たちの容姿の美しさが絶えず墓石の上で言及された(上に記された)と述べられてきているからである(has been observed)。女性は,紀元6世紀には,不純であるがゆえに,聖餐(注:せいさん:キリストを象徴するパンとぶどう酒)を素手で受け取ることをある地方の教会会議によって禁止されたことさえあった(のである)。女性たちの本質的に隷属的な地位は,絶えず維持されたのである。(注:レッキー『ヨーロッパ道徳史』第二巻,pp.357-358)
財産と相続の法律も,同じ意味で,女性の不利になるように改正された。そして,フランス革命の自由思想家の力によって,初めて,娘たちは,自分の相続権を回復したのである。

Chapter V Christian Ethics、n.13

The writings of the Fathers are full of invectives against Woman.

Woman was represented as the door of hell, as the mother of all human ills. She should be ashamed at the very thought that she is a woman. She should live in continual penance, on account of the curses she has brought upon the world. She should be ashamed of her dress, for it is the memorial of her fall. She should be especially ashamed of her beauty, for it is the most potent instrument of the daemon. Physical beauty was indeed perpetually the theme of ecclesiastical denunciations, though one singular exception seems to have been made; for it has been observed that in the Middle Ages the personal beauty of bishops was continually noticed upon their tombs. Women were even forbidden by a provincial Council, in the sixth century, on account of their impurity, to receive the Eucharist into their naked hands. Their essentially subordinate position was continually maintained. (note: W. E. H. Lecky, History of European Morals, vol. ii, pp. 357-358)

The laws of property and inheritance were altered in the same sense against women, and it was only through the freethinkers of the French Revolution that daughters recovered their rights of inheritance.
出典: Marriage and Morals, 1929.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/MM05-130.HTM

<寸言>
女性であるというだけで劣っているとみなされることは,男性であることだけで少なくとも女性よりも優れていると思うことができる。
強い者にいじめられた場合、強い者に反発するのではなく,自分より弱い者をいじめる(いわゆる弱い者いじめをする)のも同じ心理が働いているのであろう。

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