労働党政府の裏切り行為に抗議し、労働党党員証を引き裂く(ヴェトナム戦争)

TPJ-WCV2 私が行った最も重要な2つの公開演説は,ハロルド・ウイルソン(1916-1995:1963.2.14~1976.4.5まで約13年間にに渡って首相を務める。)が首相を務めている下での労働党政府の裏切り(背信行為)に関するものであった。その一つは1965年2月中旬に行った演説であり,もう一つはその8ケ月後に行った演説である。最初の公開演説は,労働党政府の外交政策一般を取り扱っており,2番目の演説は,特にヴェトナム問題に関する政策について詳細に論じたものであり,それゆえ,後者は私の『ヴェトナムにおける戦争犯罪』(War Crimes in Vietnam,1967)に収録されているこの公開演説の最後で私は,労働党からの脱退を宣言し,党員証をひきさいた。驚いたことに,この行為は同じ壇上にいたもう二人のスピーカー -一人は国会議員で,もう一人はCND(核兵器撤廃運動)の委員長- をひどくいらだたせた。後者は,世間の注目をひくために私は勝手な演出(スタンド・プレー)を行ったと,新聞に述べた。もし私がそのような行為ができたのであれば,どうして私がそうしてはいけなかったのか,理解できない。
TP-WCV2 しかし,実際のところは,一切の運営はその公開演説会を主催していた青年CNDの手中にあった。(スピーカである)その国会議員は,--ベトナムの問題について,以前からしばしば私と同様の意見を表明してきていた-- 遅れて演説会にやってきたが,私のこの行為のためにこっそりと会場を出て行った。私の言っていることと同じことをその二人とも頻繁に言っていたので,このような奇異な振舞によって,私はかなりあっけにとられた。私との唯一の違いは,彼らが公然と非難していたその労働党の党籍を彼らは離脱しなかったということのように思われた。

The two most important public speeches that I have made have been those concerned with the perfidy of the Labour Govermnent under the premiership of Harold Wilson, one in mid-Febulary 1965, and one eight months later. The first deals with the general international policies of the Government, the second dwells upon its policies in regard, especially, to Vietnam and is, therefore, reprinted in my book War Crimes in Vietnam. At the end of the second, I announced my resignation from the Party and tore up my Labour card. To my surprise, this intensely annoyed two of the other speakers on the platform, a Member of Parliament and the Chairman of the CND. The latter remarked to the press that I had stage-managed the affair. If I had been able to do so, I do not know why I should not have done so, but, in actual fact, all the management was in the hands of the Youth CND under whose auspices the meeting was held. The MP, who had often expressed views similar to mine on Vietnam, arrived late at the meeting and stalked out because of my action. I was rather taken aback by this singular behaviour as both these people had been saying much what I said. The only difference seemed to be that they continued in memhership of the Party they denounced.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3:1944-1969 ,chap4:The Foundation,(1969)
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB34-160.HTM

[寸言]
TPP-hantai_Jiminto どこの国の政党も,野党時代政権をとった後の与党時代とでは、同じ政党かと疑うほどの「変節」あるいは「優柔不断な態度」をとることが少なくない。野党時代においては、「◯◯絶対反対」と言っていたのに、政権をとると「◯◯推進」と180度、主張を変えてしまうことも少なくない。のように政策を変更した理由を国民がよく理解できるように説明すればまだしも、「情勢が大幅に変わったため」といった弁明だけでなんとかしのごうとするばかりで、国民もなんとなくそうかなあと思って、大目に見てしまう人も少なくない。そのような態度を示す政党や政治家は、今言っている甘い言葉(飴の政策)は,信用できないはずであるのに・・・。

野党時代にはヴェトナム戦争反対を主張していた英国労働党。しかし政権をとるとトーン・ダウンし・・・。ラッセルはそういった労働党(ラッセルも長い間労働党員だった)の「背信行為(裏切り)」を許せず、CND(核兵器撤廃運動)主催の公開演説会の壇上で、労働党党員証を引き裂き、労働党を脱退してしまう。

こういうことをすると必ず「売名行為」だという声があがる。「売名」を主な目的にしたものと、やむにやまれずにインパクトを与えるためにする行為とを、区別・判別できない人間は困ったものである。そういった批判や中傷をするだけで、いろいろな問題に対して、「安全地帯」から眺めて批評しているだけで、自らは何もしようとしない者は・・・。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です