ラッセル『宗教と科学』第9章 科学と倫理 n.7


 説教者(伝道者)の観点と方法は,(立法家とは)必然的にいくらか異なったものである。なぜなら,説教者は国家機構を統括(統制・支配)することはなく,従って,自分の欲求と他人の欲求との間に人為的な調和を生み出すことはできないからである。説教者の唯一の方法は,他人の(心の)中に自分自身が感じるのと同じ欲求を起させるように試みることであり,そうしてその目的のためには,彼の訴えは他人の感情に対して向けられなければならない。そこで(Thus),J. ラスキンは,議論によってではなく,リズミカルな(律動的な)散文の心を動かす効果(moving effect)により,人々にゴシック建築を愛するようにさせた(のである)(訳注:「so, hence, therefore, thusの違い」)。「アンクル・トムの小屋」は,人々(読者)に自分自身が奴隷であるかのように思わせることによって,奴隷制度は悪であると思わせる手助けをした。あるものが単にそのもの(がもたらす)効果においてだけでなく.,それ自体で善(あるいは悪)であることを人々に説得しようとするあらゆる試みは,感情を引き起こす技術によるのであった,証拠に訴えることによるのではない。あらゆる場合において,説教者のスキル(技能)は,他人に(他人の心に)自分と同じ感情を起こさせることにあるか,あるいは,彼が偽善者である場合には,自分のと似てない感情を起させることにある(訳注:善良な心を持っていない説教者の場合は偽善者となる)。私はこのことを説教者を批判して言っているのではなく,説教者の活動の本質的性格の分析として言っているのである。
Chapter 9: Science and Ethics, n.7
The standpoint and method of the preacher are necessarily somewhat different, because he does not control the machinery of the State, and therefore cannot produce an artificial harmony between his desires and those of others. His only method is to try to rouse in others the same desires that he feels himself, and for this purpose his appeal must be to the emotions. Thus Ruskin caused people to like Gothic architecture, not by argument, but by the moving effect of rhythmical prose. Uncle Tom’s Cabin helped to make people think slavery an evil by causing them to imagine themselves as slaves. Every attempt to persuade people that something is good (or bad) in itself, and not merely in its effects, depends upon the art of rousing feelings, not upon an appeal to evidence. In every case the preacher’s skill consists in creating in others emotions similar to his own – or dissimilar, if he is a hypocrite. I am not saying this as a criticism of the preacher, but as an analysis of the essential character of his activity.
 出典:Religion and Science, 1935, chapt. 9: Science and Ethics
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_09-070.HTM

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です