ラッセル『権力-その歴史と心理』第9章 世論に対する影響力 n.8

 権力の保持者が(人々の)信念に影響を与える能力を獲得するのは繰返しのもつ効果(繰り返し言うことによる効果/効能)を通してである。公的宣伝には,古い形態と新しい形態がある。キリスト教会は,多くの点で,賞賛すべき一つの(宣伝)技術をもっているが,それは,印刷術発達以前の技術であり,従って,現在では昔ほどの効果的なものではない。国家も,幾世紀かに渡って,いくつかの方法を採用してきた。たとえば、コイン貨幣に王の顔を刻みつけたり,戴冠式(coronations 即位式)や記念祭(jubilees 25年祭,50年祭,75年祭など)を挙行したり,陸海軍の(艦隊視察や観兵式などの)華々しい面(spectacular aspects)を見せたり,等々である。しかしそうした方法も,教育,新聞,映画,ラジオ(注:現代でいえばTV,マスコミ、ネット)などのようなもっと近代的な方法に比べれば,はるかに非効果的である(効果が少ない)。このような近代的な方法は,全体主義国家においては極度に利用されているが,しかし,その成否について判断するのは,時機尚早である。

Chapter IX: Power Over Opinion, n.8

It is through the potency of iteration that the holders of power acquire their capacity of influencing belief. Official propaganda has old and new forms. The Church has a technique which is in many ways admirable, but was developed before the days of printing, and is therefore less effective than it used to be. The State has employed certain methods for many centuries : the King’s head on coins; coronations and jubilees; the spectacular aspects of the army and navy, and so on. But these are far less potent than the more modern methods : education, the press, the cinema, the radio, etc. These are employed to the utmost in totalitarian States, but it is too soon to judge of their success.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER09_080.HTM

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