ラッセル『権力-その歴史と心理』第8章 経済的な権力 n.15

 けれども,商業は(現在=本書出版1938年の帝国主義時代当時)その重要性を失ってしまっている。通信手段の改善によって,(今日では)地理的立場(地の利)はかつてほど重要ではない。それにまた,帝国主義のために,重要な国家は昔ほど対外貿易の必要性は少なくなっている。(注:つまり,植民地を収奪することによって,植民地以外の国々と貿易を行う必要性を少なくすることができた。) 経済力(経済的権力)の重要な形式は,今日,国際関係の上では,原材料と食糧を占有することであり(注:possession 所有権にかかわらず持つこと),一番重要な原料は戦争に必要な原材料である(注:石油など)。このようにして,軍事力と経済力とは(どちらが影響しているか)ほとんど区別のできないものとなっている。たとえば,石油をとってみよう。石油を持たずに戦える国はないし,また戦うことができなければ油田を持つことはできない。どちらかの条件を得ることができないかも知れない(可能性がある)。(即ち)ペルシャの石油は,ペルシャ人に十分な軍隊がなかっので,ペルシャにとって役に立たなかった。また,ドイツの軍隊も,ドイツ人が石油を手に入れることができなければ,役に立たないであろう。これと似た事態は,食糧に関しても存在している。強力な戦争機構には,国民の精力を食糧生産から(戦争遂行の行動へと)大きくそらせる必要がある。従って,強力な戦争機構には,広大な肥沃な地域を軍事的に支配することができるかどうかにかかっている(依存している)。

Chapter VIII: Economic Power, n.15

Commerce, however, has lost its importance. Owing to improvement in the means of communication, geographical situation is less important than it used to be; and owing to imperialism, the important States have less need of external trade than they formerly had. The important form of economic power, in international relations, is now the possession of raw materials and food; and the most important raw materials are those required in war. Thus military and economic power have become scarcely distinguishable. Take oil, for example: a country cannot fight without oil, and cannot own oil fields unless it is able to fight. Either condition may fail : the oil of Persia was useless to the Persians because they had no adequate armies, and the armed forces of Germany will be useless to the Germans unless they can obtain oil. A similar state of affairs exists in regard to food: a powerful war-machine requires an immense diversion of national energies from food production, and therefore depends upon military control of large fertile areas.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER08_150.HTM

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