ラッセル『権力-その歴史と心理』第8章 経済的な権力 n.12


 このような権力の集中どのようにして起こったかを理解することは容易である。(注:みすず書房版の東宮訳は「のような権力の集中がどうしておこるに至ったかは見やすい道理である。」となっている。英文は Why ではなく How であり,「見やすい道理」というのは変な日本語。)たとえば,鉄道会社の一般株主は鉄道の経営に何の発言権もない。理論上は,彼(一般株主)にもちょうど国会議員選拳の際の一般有権者がその国のマネジメントに対して持っているもの(発言権)にほぼ近いもの(発言権)(have about as much as)を持っているかもしれない。しかし,実際上は,それ以下でさえある。鉄道(会社)のもつ経済力(経済的権力)はごく少数の者の手にある。アメリカにおいては,それ(経済的権力)は,通例,ただ一人の手に握られ続けている。文明国の全てにおいて,経済力(経済的権力の大部分は,少数の個人に属している。時には,アメリカやフランスや英国(連合諸国)のように,これらの人々は個人資本家であることもあれば,時には,ドイツやイタリアやロシアのように,政治家であることもある。後者の体制(system 体制;方式)は,経済力と政治力とが密接に関係している場合(注:悪く言えば「癒着している場合」)に生ずる。経済力(経済的権力)が少数の者の手に集中化する傾向(があること)は普通のことであるが,しかし,そのような傾向は,単に経済力(経済的権力)だけにあてはまるものではなく,権力一般にあてはまるものである。経済力と政治力とが密接に融合している体制は,両者が分離している体制よりも,後の発展段階にあるものであり,それはちょうど,鉄鋼トラスト(合同企業)体制が,競争し合う多数の鉄鋼製造業者(企業)よりも,ずっと後の段階に属するのと同様である。しかし,私は,全体主義国家(における状況)のことは今のところ(ここでは)論議したくない。

Chapter VIII: Economic Power, n.12

It is easy to see how this concentration has come about. The ordinary shareholder in a railway company, for example, has no voice in the management of the railway; he may, in theory, have about as much as the average voter at a Parliamentary election has in the management of the country, but in practice he has even less than this. The economic power of the railway is in the hands of a very few men ; in America, it has usually been in the hands of one man. In every developed country, the bulk of the economic power belongs to a small body of individuals. Sometimes these men are private capitalists, as in America, France, and Great Britain; sometimes they are politicians, as in Germany, Italy and Russia. The latter system arises where economic and political power have coalesced. The tendency for economic power to become concentrated in few hands is a commonplace, but this tendency applies to power in general, not only to economic power. A system in which economic and political power have coalesced is at a later stage of development than one in which they are separate, just as a Steel Trust belongs to a later stage than a number of competing small steel manufacturers. But I do not wish, as yet, to discuss the totalitarian State.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER08_120.HTM

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