ラッセル『権力-その歴史と心理』第8章 経済的な権力 n.3


 信用(力)(credit)は,他の(いろいろな)経済力よりも抽象的なものであるが,本質的に(他の経済力と)異なっているものではない。信用は,消費財の生産者から直接生産的でない仕事に従事している者(生産者以外の人たち)に,余剰の消費財を(有料で)譲渡する法律上の権利に依存している(注:1938年出版当時も株の取引はあっても株の信用取引はなかっただろうか? いずれにしても,消費財以外の「信用取引」はここではラッセルの念頭にないように思われる)。私的個人あるいは法人(会社など)が金を借りる場合には,債務は法律によって強いることができる。しかし政府の場合には(注:外国から借款したりして政府が債務を負う場合),究極的な制裁(sanction)は(法律ではなく)他国の軍事力である(ということになる)。この制裁は,革命後のロシアの事例のように,行うことができないかもしれない。制裁を実行できない(あるいはしない)場合には,借主は簡単に貸主の財産を獲得する。たとえば,誰がレナ金鉱(鉱山)へのアクセス権(及び採掘権)を持つかを決定する権力を持つ者はソビエト政府であり,戦前の株主(注:ロシア革命以前の金鉱会社の株主)ではない。
 このように,私的個人の経済力は,誰が(その)土地へのアクセスを許されるかに関する一連の規則に従って,必要であれば軍事力を使用する政府の決定にかかっている(依存している)。他方,政府の経済力は,一部はその軍事力(の大小)に依存し,また,一部は他国の政府の条約や国際法に対する尊重にかかっている。

Chapter VIII: Economic Power, n.3

Credit is more abstract than other kinds of economic power, but is not essentially different; it depends upon the legal right to transfer a surplus of consumable commodities from those who have produced them to others who are engaged in work which is not immediately productive. In the case of a private person or corporation which borrows money, the obligations can be enforced by law, but in the case of a government the ultimate sanction is the military power of other governments. This sanction may fail, as in Russia after the Revolution ; when it fails, the borrower simply acquires the property of the lender. For example, it is the Soviet Government, not the pre-war shareholders, that has power to decide who shall have access to the Lena goldfields.

Thus the economic power of private persons depends upon the decision of their government to employ its armed forces, if necessary, in accordance with a set of rules as to who shall be allowed access to land; while the economic power of governments depends in part upon their armed forces, and in part upon the respect of other governments
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER08_030.HTM

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