ラッセル『権力-その歴史と心理』第3章 権力の形態 n.15

 紳士の典型的な美徳名誉であるのに対して,学問(学識)を通して権力を得る人の美徳知恵(英知)である。知恵(英知)がある者だとの評判を得るためには,人は多くの深遠な知識や自分の情熱に対する支配(抑制力)や人々(世間)の振る舞いについての長い経験を持っているように思われなければならない。年齢(歳を重ねること)のみがこれらの資質の何がしかのものを与えると考えられる。従って,「長老」(presbyter),「領主」(seigneur セニョール),「参事会員」(alderman),「年長者」(elder)というような言葉は敬語である(敬語となる)。 古代中国の乞食は通りがかりの人々(通行人)に「老太爺(ご隠居?)」(great old sire)と呼びかける。
 しかし,賢者の権力が組織化されているところには,聖職者や学者の団体(組織)があり,あらゆる知恵(英知)が彼らの間に集中化されている考えられている。聖人は戦士(騎士/武士)とは非常に異なったタイプの性格を持っており,聖人が支配しているところには(戦士の支配しているところとは)全く別の社会が生まれる。(聖人が支配している)古代中国と(軍人が支配している戦前・戦中の)日本とは,そのような対照を例証している

Chapter III: The Forms of Power, n.15

While the typical virtue of the gentleman is honour, that of the man who achieves power through learning is wisdom. To gain a reputation for wisdom a man must seem to have a store of recondite knowledge, a mastery over his passions, and a long experience of the ways of men. Age alone is thought to give something of these qualities; hence “presbyter,” “seigneur,” “alderman,” and “elder” are terms of respect. A Chinese beggar addresses passersby as “great old sire.” But where the power of wise men is organized, there is a corporation of priests or literati, among whom all wisdom is held to be concentrated. The sage is a very different type of character from the knightly warrior, and produces, where he rules, a very different society. China and Japan illustrate the contrast.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER03_150.HTM

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